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□涙の味
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『キラが好き…大好きなの…
でも、好きだから、一緒に居て辛い…
だから……ごめんなさい…ごめん、なさ…』

彼女との最後の思い出は涙の味のキスだった

ただお互いを好きという気持ちだけではダメなんだと初めて知った16歳の夏の終わり

僕がラクスのお願いを断れないと知っていて、あんなことを言ったのだろうか?
だとしたら、卑怯だ…なんて思ったりもした

みっともなく、泣いてすがるという手段もあったけれど
ラクスを悲しませたくない、何時でも笑っていてくれるなら、自己犠牲も当たり前だった

だから、ラクスの最後のお願いも、優しく微笑んで叶えてあげた


あれからもう10年
季節は冬。春はまだ先だ

仕事も、生活も落ち着いて寧ろ余裕が出始めて
たくさんの恋の誘いもあったけれど…
もう終わった筈なのに、ラクスへの裏切りに思えてずっと一人で生きてきた

友人達からの結婚や出産の報告に祝福しながら
ラクスと叶えられなかった未来を掴んだ友人達を羨んだりもした

「キラ、今度の合コン人数合わせで頼む!」

「…また?どうせ誰とも話さないよ?」

「いいんだよ、ディアッカの奴が急に彼女出来たとかでキャンセルしやがって…
人数集まらなきゃ流れちまうからさ…
会費はキャンセル料って事でディアッカから徴収済みだからさ、ただ飯くらいの感覚で…」

「ん、わかったよ…」

夕飯代が浮くのは有り難いし、何よりミゲルが幹事になると美味しい店を見付け出すから密かに楽しみでもある

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