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□幼い10題<完結>
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2.あ、わんちゃんだ!

くりくりとした円らな黒曜石の瞳
キラキラと太陽の光で輝く亜麻色の艶やかな毛並み
緩やかなカーブを描くふさふさとした揺れる尻尾

ラクスは今、運命の出会いだと胸を高鳴らせていた

勿論、運命の出会いと言ってもキラとの出会いが一番で別格だが…

「き、キラ!この愛くるしいのは何ですか!?」

「それは、犬だよ
絵本でも出てたでしょ?わんちゃん」

「わんちゃん!可愛いです!」

店の看板犬に興味津々なラクスは上下左右あらゆる方向から姿を眺めて大興奮だった

「お嬢ちゃん、犬見るの初めてなのかい?
珍しいねぇ」

「はい!キラが連れてってくれるまでずっと暗いお部屋に繋がれてたので…」

ニコニコと話すラクスにキラは内心人魚だとバレたら、とヒヤヒヤしたが店主のおばさんはどうやらラクスが元奴隷と思ったのか微かに息を飲み優しく微笑みかける

「そうかい、優しい人に会って良かったね?」

「はい!」

にっこりと微笑んで頷いてまた犬を眺める
看板犬だけあり人懐っこく愛らしい表情で尻尾を振る犬にキラの買い物が終わるまで飽きもせずに眺め続け
キラに手を引かれ帰る時も名残惜しそうに何度も手を振りながら店から離れた

「ラクスは動物好きなの?」

「んー…さっきのわんちゃんみたいな普通の動物は初めて見たのでよく、わかんないですけど…可愛くて好きですわ」

人魚として産まれてからずっとほの暗い部屋に囲われ、時折華やかな場所に出ても闇オークションでの景品として
回りには同じような境遇の人魚や、人間の奴隷、見せ物の異形達ばかり

だからこそ、普通の動物は初めてで、こんなにも愛らしいのかと驚いたのも事実だった

「そう…まぁ、旅をしてるから動物飼えないけど…
代わりにこれあげる」

「わ!お菓子!!」

キラから渡されたのは動物の形をしたクッキー

早速開けようとするラクスを宿屋まで我慢させ、部屋に着くと直ぐ様ねだるラクスに箱を開けてやれば喜んで食べ始める

「キラ、あーん!」

「え?僕はいいよ、ラクス好きなんだから食べな?」

「幸せのお裾分けです!
はやく、あーん!」

「ん…わかったよ、ありがと」

キラが自分の差し出すクッキーを食べたのを見て一番幸せそうに微笑むラクスだった


end
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