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□指先からロマンス
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(私とヤマトさんの間にはロマンスは期待できないのかしら…)
はぁ…、と溜め息混じりに次の予約の為にスケジュールを確認する
視界に写る爪は相変わらずにやけてしまいそうな程に今回も良い出来だ
好きな色を把握してくれているのだろう
毎回左手の薬指は淡い紫でハートやお花がデザインされていていつも気に入っている
今回も淡い紫で桜の花弁のような、小さなハートの寄せ集めで花形になっている
毎回この指にだけ、こっそりと隠されたハートマークを探すのも実は密かな楽しみだったりするのだ
隠れミッ○ーみたいな、レア感を感じるから
「ふふ…ヤマトさん、今日のは簡単ですわね?」
「え?」
目を瞬かせるヤマトさんは、なんのこと?と首を傾げる
「薬指のハートマークですわ
いっつもこっそりと描いてありますでしょう?
ウォーリーを探せみたいなコンセプトですか?
毎回、探すの楽しみなんですのよね」
ニコニコと微笑んで話すとみるみるヤマトさんの顔は真っ赤になって、茹で蛸みたいになってしまった
「あ、あの…私変なことを言ってしまいましたか…?」
「っ…ハートマーク、を…
注文じゃなく毎回描くのは…ラクスさんだけです、よ…」
「…え?」
今度は私が目を瞬かせる番だった
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