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□指先からロマンス
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「…左手の薬指…僕の気持ちが伝わればって…毎回願いながら、ハートマークを描いていたんです…」

「左手の薬指…え…あ…」

どうして忘れていたんだろう…
女の子にとって、左手の薬指は特別な指ではないか…!
ヤマトさんにネイルをしてもらうようになってから、全ての指が特別になっていたから失念していた

「……ラクス・クラインさん…君が初めてお店に来て一目見て、惹かれた…
僕の気持ちを受け取って欲しい…」

「あ…わ、私…」

頭が真っ白になってしまって、言葉が浮かばない

まさか、あのヤマトさんから告白されるなんて!?

「…すみません…こんな事言って…忘れてください
気まずいようでしたら、別のネイリスト、紹介しますから…」

なかなか答えない私に勘違いをしたのか、苦笑気味に告げるヤマトさんに青ざめる

慌てて手を握り、思いの丈を伝えなくちゃと口を開く

「わ、私のネイルはずっとヤマトさんが担当してください!!
ヤマトさんにネイルをしてもらってからは、爪を見る度にヤマトさんを思い出してニヤニヤしちゃうし
ヤマトさんにネイルをしてもらうのに、予約した前日には美容室に行ったり、コーディネートを丸一日考えちゃったり…
ヤマトさんに会う口実の為に簡単なケアまでお願いしちゃうくらいで…
えと…とにかく!ヤマトさんに惚れてるんです!!」

自分でも何を言ってるんだ、と呆れてしまうくらいにまとまらないままに一気に告げる

「え…あ…えと…じゃ、じゃあ…僕とお付き合いしてくれます、か…?」

「寧ろ、私の方こそお願いします…!」

「あ、はい…よろしくお願いします…」

ペコリと頭を下げ合う私達は滑稽だっただろう…

数ヵ月後、男性ネイリスト一人で運営していたサロンに一人の女性が雑用兼見習いとして働き始めた

美男美女夫婦で運営するネイルサロンとして口コミで人気になるのは更に数年後の話…


end
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