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□メリクリ
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その後、ウキウキと楽しみにしていた映画を見に映画館に迎い
迷惑なほどにいちゃつくカップルに挟まれ集中できず
CDショップではクリスマスのラブソング特集
本屋はデートスポットを案内するガイド雑誌や恋愛小説
狙っていたワンピースは彼女へのプレゼントと男性に最後の1枚を目の前で買われてしまった
極めつけは、心無いカップルに「クリスマスなのに一人…」と笑われてしまった
「クリスマスに恋人が居るのがそんなに偉いんですかぁっ!!
本来は家族で過ごす日なんですのに!!
おじ様、おかわり!」
「ラクス…飲み過ぎじゃないのか?」
ダンッと勢いよくグラスをカウンターに叩き付けるように置き、叫ぶラクスにカウンターの中からマスターでもあるバルトフェルドは苦笑を浮かべる
「飲み過ぎなんかじゃありません!!おーかーわーりー!!」
座った目で叫ぶラクスだが、既にグラスをいくつも空けている
身寄りの無いラクスの後見人として、親戚として、店の主人として、更には親代わりとして…
どの立場から見ても、ラクスにはこれ以上飲ませる訳にはいかないと判断したバルトフェルドは駄々をこねるラクスにレモンを絞った水を代わりに出す
「お酒じゃありませんけど…」
「シーゲルさんも、もう飲むなって言うと思うがね」
「っ……おじ様、ずるい…」
ジロリと睨み付けるも飄々とした様子で大好きな亡き父の名前を出されては引き下がるしかない
仕方無く出されたレモン水を煽るように飲み、お手洗いに行こうと立ち上がる
「っ!?」
「ラクス!?」
ぐらりと視界が歪んで、その場に踞り座り込んでしまい
予想以上に酔いが回っていたのかと今更ながらに自覚する
「…大丈夫ですか?」
「……?」
そっと肩に手を置かれ、優しく声をかけられゆっくりと顔を上げる
そこには、心配そうに顔を覗き込む男性がいた
印象的なアメジストと視線が絡み合い、暫し酔いも忘れて見惚れてしまった
「あの…大丈夫ですか?」
何の反応も示さないラクスに首を傾げつつ、もう一度問い掛けられハッとなり慌てて口を開く
「あ……う…気持ち悪い…」
「え?」
「うぇ…っ」
がっしりと男性の服を掴んだまま、一気に青ざめたラクスはそのまま
男性の服へと吐いてしまった
――‥…
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