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□一生一度の〇〇〇
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お色直しから戻った二人は今度は一転、和の様相だった
先程見せて貰ってはいたが、ラクスが着た色内掛けは桜色が髪の色と相まって桜の精霊みたいだったし
一緒に着替えたキラの若草色の羽織り袴が二人並ぶともうすぐ来る春が一足先に来たようだった
昔の写真をスライドで思い出話と一緒に上映して、次に友人達の余興
その後、いよいよ俺の出番だ
内容は頭に入っているけどもう一度手紙の位置を確認し、渇く喉をジュースで潤す
《続きまして、新郎キラ・ヤマト様のご子息、シン・ヤマト様より手紙の朗読です》
司会の言葉にキラもラクスも目を瞬かせ不思議そうにこっちを見てる
視線を浴びながら壇上に上がりマイクの前に立つ
《父さん、母さんご結婚おめでとうございます…》
そして俺は凡そ10分にも渡って
キラに引き取られてどんなに幸せで楽しい幼少期だったか
学校の先輩のラクスが母親として現れて
驚きながらも家族として愛情を注いでくれた事に感謝している事等
普段言えない事を語った
キラと二人の幼少期のバカ話に最初は皆笑ったりもしていたが、次第に会場が静かになり
啜り泣きの声が混じるようになった
キラとラクスも目に涙を浮かべ真剣に話を聞いてくれた
予想よりつっかえたり、泣きそうにもなったけど
なんとか読みきった時には盛大な拍手に包まれた
手紙をキラに差し出せば強く抱きしめられた
普段なら照れ隠しで逃げるけど、今日くらいは、と大人しくされるがままになる
頭を撫でられ何度もお礼を言われる
「父さん…ありがとうはこっちのセリフだから…
幸せになれよな?」
笑いながら言えばキラは微かに赤い目で何度も頷いた
後ろで母さんも涙を拭いながら優しい笑みを向けてくれた
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