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□【恋に頑張る10のお題】<完結>
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込んでいるから当たるのだろうと思っていたが
徐々にその手は明確な意志を持って太股に触れて来る
恐怖に息を飲み声が出なくて
ただただ早く駅に着いてと願った
無抵抗なのを良い事に手は遠慮なく太股を撫で回し、徐々に上がってくる
じんわりと涙が滲み助けを求めて無意識に顔を上げれば
綺麗な紫水晶の瞳を驚愕に見開く
同じ学園の男子生徒と目があった
「……た、助け…ちか、ん…」
震える声ですがるように彼に告げれば直ぐに解ってくれたのか
腕を掴みグイッと引き寄せられた
「ごめん、そっち人多くて苦しかったよね
こっちスペースあるからおいで」
抱き寄せられ微かに恐怖で肩が震えたけど流れるような動作で位置が交換され
ドア付近に幾らかのスペースを作ってくれる
当然、痴漢の手は離れ
学園の最寄り駅までの間ずっと彼が壁になって人混みに潰されないようにしてくれた
触られた場所が気持ち悪くて無意識にハンカチで拭っていたけど
冷静になると彼にお礼を言っていないんだと思い出した
言わなくてはいけないのに、言葉が上手く使えない…
気まずくて俯いてしまう
『…学園前ー、お降りの方はお出口…』
アナウンスにハッとなり意を決して慌てて顔を上げる
「あ、あの…あり…プシュー」
ようやく出たお礼の言葉を遮って扉が開き
ホームに出る人の波に流されるように自分もホームに降り立つ
慌ててもう一度探したけれど人の波が凄くて見失ってしまった
呆然と立ち尽くす私の周りを邪魔だという視線を向けながら皆歩いていった
車両がまたホームから出てから仕方なく歩き出して学園に向う
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