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□【恋に頑張る10のお題】<完結>
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10.ドキドキが止まらないけど、思い切って告白



人混みを掻き分け、勝手知ったる女子部の校舎を駆け抜ける

一般開放されていない階に移動して
カツカツとブーツの踵を響かせながら走る


一応生徒の休憩所として開放してあるとは言え
こんな日に人は居ないだろうと図書室に入る


室内には案の定誰も居なくてホッと息を吐く

静かに扉を閉めて、何時もの席に向う


「………せっかくの文化祭なのに…」


どうして逃げ出してしまったんだろう、と自己嫌悪に襲われる

何時もの席の向かい
キラが何時も座る席にそっと腰掛ける

あまりこの席を使う人は少ない為
今はほぼキラの指定席みたいなものだった

大好きな本の香りに包まれるとラクスは今まで悲しい事も辛い事も和らいだのに
今回は全くそうならなかった

「…きっと、一緒に居すぎて…甘えちゃったんです…」

図書室の、大好きな、大切なこの席には今まで友達だって一緒には座らなかった

なのに、キラとは数ヵ月も一緒にこの大切な席で過ごしてしまった

コツン、と額を机に押し付け突っ伏す


窓の外からは文化祭の賑やかな喧騒が響いていたが図書室は静かだった

遠くでガラリ、と音がして誰かが休憩に来たのかと思う

カラコロと足音が近付いて慌てて顔を上げるとキラが居た

きっと走ったのだろう
息は乱れ、着流しも微かに乱れているし
頭に付けていた狐の面は手に持っていた

「っはぁ…ラクス…」

「ヤマト、君…」

気まずさに顔を反らそうとしたら
グイッと顎に手が添えられ無理矢理上げられる

真剣な瞳に反らす事も出来なくて戸惑っていると
彼の顔が微かに歪みそっと手が離される

「…ごめん、付きまとって、迷惑だったよね…
ラクスがそんな事言えないもんね…」

いきなりの言葉に目を瞬かせるラクスに苦笑を浮かべるキラ


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