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□【恋に頑張る10のお題】<完結>
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「…いつも、ここで本読んでるの?」
「っ…は、はい…」
問いに慌ててコクコクと頷けばニッコリと笑みを向けられた
「僕もこれから一緒していいかな?」
「…え?」
「此処の雰囲気が気に入っちゃってさ…」
ダメかな?と告げる彼にブンブンと首を振り否定する
「と、図書室は…共有の、だから…」
「そっか、ありがとう」
お礼を言う彼にまた首を振る
心臓が駆け足で動いている
男性だからだろうか、と考えてもこんなにも駆け足なのは彼にだけな気もする
図書室だから何か本を読まなくちゃね、と近くの棚から適当に本を取り出した彼
この席の周りは専門書ばかり
私も難しくて手を出せないジャンル
受験シーズンには先輩方が借りていたみたいだけど、ほとんどが綺麗なままの状態だ
そんな専門書を読むのだろうか、と彼を見ていたら
パラパラと捲りながらずっと首を捻っている
つい、吹き出してしまい慌てて口を押さえたら既に遅くて
彼がビックリしたように目を見開いていた
「あ…ご、ごめんなさい…
その…ここ、専門書のコーナー、だから…
それも…ドイツ語の医学書、みたいですわ…」
「え?あ、そ、そうなんだ…
道理で読めない訳だ…」
照れ臭そうに本を棚に戻す彼にまた頬が緩んでしまった
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