*小話
□うたた寝すやすや。
1ページ/11ページ
トタトタトタトタトタ──
心地良い日の光が、窓から優しく降り注ぐ。
そんな麗らかなある日の昼下がり、綺麗に磨かれた渡り廊下に、軽やかな足音が僅かに響いていた。
足音の主は、息を弾ませ、さらさらと金色の髪をなびかせて足音と同じく、やはり軽やかに走っている。
彼女の頬には赤みがさし、口元には嬉しそうな笑みが浮かび、今向かっている先が楽しみでならないことが、誰が見ても一目で分かるだろう。
普段は決して、蚊程も足音を立てない彼女が気を許し、嬉しさのあまり少しだけ気配を殺すのを忘れるのは、彼に相対するときだけだということを、城内の誰もが知っている。
*うたた寝すやすや*
_