*小話
□うたた寝すやすや。
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すると──
「………ぁ…」
目に飛び込んできたのは、頬杖をつきながら目を閉じ規則正しく、すー…、すー…と小さな寝息を立てる、彼女が敬愛する君主の姿。
その寝顔はどこかあどけなく、“軍神”という二つ名を持つ人物とは思えない。
整った眉、長い睫毛、すらりと通った形の良い鼻、桜色の唇、それらが鮮やかに映える雪のように白くて滑らかな肌───
(……………はっ!!み、見惚れてしまった…!)
頬を紅に染め、暫しうっとりと彼の顔を眺めていたかすがは、はっ、と我に返った。
そして音も無くその場から消えたかと思うと──
──スタッ
数秒後に、再び音も無く舞い降りた。
手には軽い毛布を持っている。
(疲れてらっしゃるのだろう…本当は横になって頂きたいが、動かしたら起こしてしまうし…。
とにかく風邪を召されたら大変、せめて何か掛けておかないと…)
ふわりと毛布を広げ、眠っている謙信の肩にそっと掛けた。
「…お疲れ様です、謙信様…」
綺麗に微笑みを浮かべたかすがは小さな声で、そう呟いた。
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