*小話
□うたた寝すやすや。
4ページ/11ページ
それにしても、こんなに起きないのは珍しい。
天下の軍神、上杉謙信様なのだから、きっと気を張り詰めていて、何か気配がしたらすぐに起きる筈。
私がこんなに近付いてもお起きになられないなんて…。
「……私には、気を…許してくださっている、ということでしょうか?謙信様……」
そうだと、良いな。
自然と口角が上がってしまう。
再び謙信の顔を覗き込むと、何だか気恥ずかしくて、かすがの頬が再び赤らんだ。
「謙信様…」
何だか、動悸が激しくなってきた。
謙信様のお顔がこんなに近くにある(近付いたのは自分だけど)。
それだけで、もう。
ドキドキ。どきどき。
自分の心臓の音がやけに煩い。
頭がぼぉっとしてきた。
どうにも抑えられなくなり、より一層謙信の顔に、彼女は自分の顔を寄せた。
お互いの吐息が感じられそうな距離で───
ちゅ。
頬杖をついていない方の頬に、そっと口付けを落とした。
_