S・S

□S・S
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【eye】

「ねぇ、広斗(ヒロト)」

僕が名前を呼ぶと、広斗は微笑んだ。

「なに?実(ミノル)」

僕たちは今、広斗の部屋のベッドの上で。

2人して、寄り添うように座っている。

「僕ね、思うんだ」

人間って、目を開けていられる時間が決まっていると思うんだ。

それは、生まれた時から。

そしてその時間の長さは、人それぞれ決まってると思う。

だからね。

起きてる時間が長い人ほど。

早く死んじゃうんじゃないかな。

目を開けている時間が長い人ほど。

早く死んじゃうんじゃないかな・・・。

「・・・」

広斗は黙って、けれども、真剣に僕の話を聞いてくれていた。

これは、今、僕が唐突に思ったこと。

だけど。

とても、不安に思ってしまったこと。

人間は、目を開けていられる時間が終わると。

ずっと目を瞑ったままになってしまう。

きっと。

それが『死』なんだ。

「神様って、意地悪だよね」

僕はただ、広斗を見ていたいだけなのに。

ずっと、一緒にいたいだけなのに。

なのに、ずっと見つめていると。

それだけ早く、寿命が尽きてしまう。

それだけ早く、広斗との別れがきてしまうんだ・・・。

─こつん─

僕は広斗に頭を預けた。

「広斗・・・僕、どうしたらいいかな?」

自分でも、訳が解らないことを言っているのは十分理解している。

だけど。

不安で仕方ないんだ。

「実・・・」

不意に、広斗が僕を包み込む。

「このまま、目を閉じていて・・・」

「どうしたの?」

疑問に思いながらも、広斗に言われたとおりにする。

「・・・ほら、こうしていればいいんだよ」

こうしていれば、目を閉じていても。

実の顔が見えなくても。

俺は、実を近くに感じていられる。

・・・ずっと、一緒にいられる。

広斗は更に、ぎゅっと僕を抱きしめた。

「広斗・・・」

ありがとう。

僕も、広斗を強く抱きしめた。

もちろん、目をしっかりと瞑って。

この時間が、永久(トワ)に続くことを祈りながら・・・。



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