小説
□dark forest
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【1】
僕が中学に入学してから、2度目の夏が来た。
既に夏の大会も終わり、3年生がいなくなった今、僕の所属する野球部は新体制で練習に励んでいる。
そして今年もやってきた。
山での、合宿の時期が・・・
「せ〜んぱいっ!おつかれさまです!!」
タオルをもった後輩が1人、僕のところへかけよってきた。
この子の名前は慧。
入部してから、なぜかずっと僕になついてくる。
慧は見た目が小学生みたいに小さいから、弟ができたみたいで僕はすごくうれしかった。
「あ、慧。ありがと!」
そう言って僕は慧からタオルをうけとった。
「せんぱいの投げる球、やっぱりすごく速いですね!」
「そうかな・・・」
「はいっ!!」
うれしかったけど、照れちゃって思わず下をむいちゃった。
慧は、僕をキラキラした眼で見つめている。
「今日で合宿も5日目ですね!」
「そうだねぇ〜。明日はいよいよ地元中学との練習試合かぁ〜」
「せんぱい、がんばってください!!ぼく、いっしょうけんめい応援しますから!!」
「うん、頑張るよ!」
「あ、せんぱいの道具の手入れ、ぼくがやっておきますね?」
「いいよ、それくらい自分でやるって」
「ダメですっ!せんぱいは明日のために早くからだを休めてくださいっ!!」
「わかった・・・慧、ありがとう」
「そんな、お礼なんてやめてくださいよ・・・僕が好きでやってるんですから」
「そっか。じゃあ、先部屋に戻ってるね」
「はいっ!!おつかれさまでしたぁ〜!」
慧がなついてきてくれるのはうれしいんだけど、ちょっとイキスギかなってところがあるんだよね・・・なんて、最近思ってたりするんだよね。