拙作、小説
□年男2010
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<即興お題ショート>
お題:星 希望 鹿
【ぼくとななちゃんと流れ星そして】
夜。二人だけの叢(くさむら)で。
「……ねぇ、ななちゃん」
ぼくは語りかけるように言う。
「見て……、星が綺麗だよ?」
ぼくはささやくように言う。
「ねぇ、ななちゃん……ほら」
ぼくは気づいたように言う。
「あそこ……鹿みたいだよ。鹿の星座ってあるのかなぁ」
ぼくはつたないふうに言う。
「角も生えてるよ? ね、見えるよねぇ……?」
ななちゃんは答えない……
「………………」
絶望的なまでに答えない……
「ななちゃん……」
「………………」
白雪姫は、王子様の――
ぼくは最後の希望を込めて、キスをした。
「……ななちゃん……」
ななちゃんは呼吸音さえもなく、正しく静寂で。
………………
ふと。
ふと、夜空を仰ぎ見る。
その時。
満天の星空で。
一筋の輝きが。
さーっと。
はためいて、消えた。
「ななちゃんが生き返りますように」
ぼくは、目を閉じて、祈った。
なによりも強く。
なによりもただ、ひたすらに。
願いは……
――夜闇へとはかなく消えた。
END