拙作、小説
□デキソコナイ小説
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【わからない、気持ち】
雪子(せつこ)へ
ごめん。
俺、おまえの事、ちっともわかってやれなかったよな。
楽しい時も、嫌な気分の時も、つまんない時も、死ぬほどつらい時も、狂ったように泣き叫んだ時も、おまえはいつも……いつも傍にいてくれたのに。
なんで、こんな事になったんだろ……
なんで、雪子……おまえの気持ち、わかってやれなかったんだろうな……
今更こんな事、言ったってむなしいだけだろうけど、言うよ。
言わせてくれ。
俺、おまえの事、好きだった。
本当に、本気の本音で、すっげぇ大好きだったんだぜ……?
……雪子。
あぁ……
なんで……なんで……
俺を殺したんだ?
おまえの気持ち、今でも全然わからないよ……
生まれた時からずっと一緒だったのに……
あの日。
おまえは大根を切っていた包丁で、突然、俺を刺したんだ。
心臓の止まった俺を、さらに解体していく雪子……
頭と胴体と腕と脚。
胴体はさらに半分こされた。
切断面から内蔵がごぼっと飛び出る。
それらをいちパーツずつ黒いゴミ袋に入れていく。
……死んだ俺はずっと見ていたよ。
窓から入ってきた陽光で、おむつが赤黒く濡れ光っていた。
俺を産んでおいて、
なんで殺すんだよ。
雪子。
わからない。
わからない。
ごめん。
ごめんなさい。
わからない……
わかんない……
俺は、どうしたら生きられたのかなぁ。
どうしたら雪子に気に入ってもらえた……?
ねぇ……
ねぇ……
ママ。
あなたの傍で、
もっと生きたかったよ……
もういない貴女の息子より