ノンフィクション

□○○と僕シリーズ
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【家族と僕】

 僕には普通の家族がいる。
 鬱病患者の父とヒステリックな母と人間関係に少々うんざりしている弟、それに左半身不随の母方の祖母である。
 鬱病のくせに視線恐怖をあまり感じないのか市内を散歩できる父がうらやましい。家では常に怒るか馬鹿笑いしているけれど外ヅラはよいらしい母がうらやましい。嫌いなやつに好かれるとか愚痴を言いながらも前向きにきちんと生きている弟がうらやましい。七十年以上も一生懸命に生きてきた強い精神をもった祖母がうらやましい。
 僕の家族は貧乏だし騙されやすい馬鹿正直な人が多い。真面目すぎたために心を病んだ父などはその最たる者である。基本的に「いい人」ばかりで、僕とは違いすぎる。弟などは世渡り上手な感じのする、人当たりの良さを備えている。僕ではなく彼こそが好青年であると思う。いまだに彼女ができないのは色恋に興味がなさすぎるからである。
 僕のただ見せ掛けだけの薄っぺらい演技に騙される周囲が馬鹿らしい。僕はただ口数少なく静かに佇んで時折り微笑んでいるだけなのに。心では他人を嘲っているだけなのに。他人に恐怖して口ごもっているだけなのに。
 社会に嫌われまいとただ取り繕っているだけの自分が、酷く愚かしい。
 嫌悪感丸出しで他人との関わりを避ける学校での自分も、酷く醜い。
 好きな人にだけ声をかけて、また困ったときに助けを求める、ただ欲求だけの自分も、酷く図々しい。
 全くもって、酷い人間だ。
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