処女小説
□『嘘の少年』
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タイチが率いる、というわけではないが、このグループはタイチを中心に集まった勢力だった。
…タイチは気づいてないが。
小・中・高、全国どこのクラスにも勢力図はある。
大まかに別けると、イジメをする勢力・イジメられる勢力・中立勢力の3つになる。
タイチ達のグループは、イジメられるグループにあたるが、中立派の人間も何人か居た。
タイチも、その1人である。
中学2年という彼らの年齢での人付き合いは、だいたいが、次のような変遷をたどってきたものである。
まず(近所付き合いや幼稚園は除いて)、小学校6年間で、友人関係はそれなりに確立される。
小さい頃は、無邪気なためか友達が作りやすかったりするので、同級生のほとんどと友達になる。
次に、中学校は公立の場合、小学校が数校集まった、いわば寄せ集めのようなものである。
当然、入学当初は母校が同じ者どうしで集まる。
だが、次第に打ち解けあって、2年になる頃には小学校時代の友人関係を基盤に、友達の輪が広がる。
しかし、タイチは違っていた。
どういうわけか、彼のグループには彼と同じ母校の者はいない。
顔が醜いわけでもなく、性格が極端に悪いわけでもない。
どう見たって、普通の少年なのだが。
そんな彼に、――中1当時孤独だった、しかし、ちっとも寂しげな素振りを見せない彼に、
1人、また1人と興味本位で近づいていき、今では10人を超えるグループとなっていた。
ある者は、転勤族で友達がおらず、孤独な彼に同情してもらいたくて近づき。
またある者は、人を差別しない自由な彼に惹かれて近づき・・・。
特異な例として、ムスっとしている彼を見るに見かねてグループに入った《お笑いのキムタク》なんてのもいるが。
まぁしかし、彼はこのグループの重要な存在だ。卓巳は、そのルックスと笑いのセンスで、学校中の人気者である。
そんな彼がいることで、グループ間でのイザコザは、全くと言っていいほどなかった。