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□君限定の僕
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ティエリア視点。アレティ同棲中。パロディ(現代ではないです。パラレル。)
アレティエ+リジェ









中々思い通りにならないもの、そして変えることが難しいものというのが、――己れの性格だ。

アレルヤとの新生活。所謂同棲というのを始めたのは二人がアカデミーを卒業し、就職先が決まったのがきっかけだった。いや、率直にいうのなら、アレルヤの中央都市から離れた郊外への就労が決まったからだ。離れ離れになるものだと思い込み、酷く落ち込んだ様子だったアレルヤを見かねティエリアが「俺の仕事はどこにいても出来るものだ」そう言った瞬間のアレルヤの輝くような笑顔といったら。すぐさま勢い込むように「じゃあ!あの…君さえ嫌じゃなかったら、僕について来てくれないかな!」そう言われたのだ。
元々アレルヤとは恋仲であったティエリアは二つ返事…とはいかないが、しょうがない、という感じで、しかし内心では当たり前だという風に返事をした。

「君のいるところならば、どこへでも」と、そう言いたかったけれど性格上言えなかったから、アレルヤの顔が近付いてくるのに、素直に瞼を下ろした。
唇が重なって、ティエリアは抱き締められた広い胸の中、ぎゅうと背中に手を回した。アレルヤと共にいられることが嬉しいのだと、こんなにも嬉しいのだと――そんなどうしようもない想いが全て、アレルヤに伝わるようにと強く、強く。




「なっ…!、君がなぜ、」

ここに。という言葉が出る前に、己れと同じ顔がふふ、と笑った。自分とは違う笑い方だとティエリアは思う。自分は恋人に対してさえ上手く笑えないから。

「ん?なぜって?久々に実家に帰ってみたらティエリアがいなくって驚いたからに決まってるよ」

「……」

他人の家のリビングのソファに堂々と居座り、そんなことを言うのはティエリアの兄だ(二つ年が離れているから双子ではない)リジェネも実家から離れた場所で独り暮らしをしていたから、今まで情報がいかなかった…というよりは、ティエリアが故意にいかないようにしていたのだ。

「それなのに帰ったらさ、ティエリアが誰かと一緒に住んでるって言うじゃない。なに、同棲?――ティエリアが卒業したら、僕のところに呼ぼうって思ってたのに」

不機嫌そうにするリジェネは、過度のブラコンなのだ。だから知られたくなかった。

リジェネが柔らかな動作でダークブラウンのソファから下り、カーペットに足を下ろす。カーペットの色はソファより薄いブラウンだ。落ち着く色が良いよね、と買い集めた家具を見る度にティエリアは彼を思い出した。『こうやって家具を探して回るのって、なんか新婚さんみたい』そう言ったアレルヤの嬉しそうな顔を。
リジェネは立ち上がると、キッチンの方へ歩いていく。まだ話しが終わっていないのに、とティエリアは溜め息を吐く。

―――リジェネにこの生活を知られたくなかったのは、まだ理由があったから。

「俺だって…リジェネに伝えなかったことは悪かったとは思っている。でも、もう子供じゃないんだ。そんな逐一報告することでもないだろう、」

「……」

勝手に食器棚やアレルヤが大事にしている調理道具の入った戸棚を見るから(否、アレルヤの場所ともいえるキッチンにリジェネが立っているから、かもしれない)自然に語尾が険を含む。
しかしリジェネは、楽しそうに笑顔を浮かべるばかりだ。

「ふぅん…けっこう道具とか揃ってるし、綺麗にしてあるんだ。君は料理できないもんね。彼、上手いの?」


「…なっ、」

「君は生活力がないから、そういう君でも嫌な顔せず世話焼いてくれる人じゃなきゃダメだろうなぁ、ってずっと思ってたよ」

「……」

「でもティエリアは昔っからその容姿のせいで変な人にばっかり好かれるけど、やっとまともな人に会えたんだねぇ。無理でも僕が養ってあげようって思ってたのに、残念、」

全く残念そうにしない理由が分からなくて、しかしめざとく見付けた対のマグカップにリジェネがふぅん、と不機嫌そうにしたのが分かった。

「……リジェネは、何をしに来たんだ。用事がないなら帰ってくれ」

「兄さん、でしょティエリア」

「……」

今更呼び方なんてどうでも良いのに、リジェネはそれにこだわる。全てにおいて勝っているリジェネを兄弟だと認識するのを嫌がっているティエリアの気持ちさえ、分かっているのだ。
ああでも、リジェネの不埒な指がマグカップに伸びる前に止めなくては。それは、アレルヤのお気に入りだから。

「…にいさん、何しに来たんですか、理由を言って下さい」

溜め息混じりに言えば、リジェネが無邪気に笑う。指は方向を変え、ティエリアの髪へと伸ばされた。



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