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□Mischievous Kiss
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場所、プトレマイオス内廊下。
眦をつり上げたティエリア・アーデは目的の人物を発見して、声を上げた。

「アレルヤ・ハプティズム!!」

呼ばれた人物は、すぐにくるりとこちらを振り向いた。そして、ぱっとその端正な顔に明るい表情を浮かべる。常日頃から大型犬の如くティエリアにかまえかまえと付いて回るその人物は、名を呼ばれたことが大層嬉しいようだった。しかし、ティエリアはというとアレルヤのその表情に、更に眉間の皺を増やした。

「なぁに?ティエリア、どうかしたの?お腹でも減ったのならお菓子を…」

「どうもこうもない!…っ、どうしてくれる!!」

「え、何が?」

意味が分からない、という風にアレルヤが見てくる。ティエリアは先程ブリーフィングルーム近くの通路でロックオンに言われたことを思い出して、アレルヤの顔に一発お見舞いしてやりたくなった。

「お前のせいだぞ!お前が場所もわきまえず何時でも何処でも…キ、キスなんてするからっ!!」

「一応わきまえてはいるつ
もりなんだけどなぁ…」

「うるさい!ロックオン・ストラトスに見られていたんだ!どうしてくれる!」

きつく、目の前の自分より余程体格の良い恋人を睨みつける。そのアレルヤはといえば、うーん、と少し考えるような仕草をした後、しかしすぐに表情を明るくした。

「ティエリアは知らないだろうけど、今日はエイプリルフールって言ってね、嘘ついても良い日なんだよ。きっと君はロックオンにからかわれたんだ。」

「……え、」

その余りに予想外な切り返しに、ティエリアは固まる。

「えいぷりる……?そ、そうなのか?」

「うん、そうだよ。」

そう言ってにこりと笑顔を浮かべながら、たぶん違うだろうなぁ、とアレルヤは思った。ロックオンの言葉はきっとそのままの意味だろう(ティエリアはキスに夢中で気付いていなかったかもしれないが、アレルヤは誰かに見られたかな、と思ったことが一度あったの
だ)
しかし、だからといって素直にティエリアの逆鱗に触れる気はない。何より、そんなことになれば自室以外でティエリア接触禁止令が出されることは避けられないだろう。

(それは、勿体無いからね。)

だって、毎回周囲の気配に気を配ってはいるが、自室以外の場所でキスをするのは中々に楽しいものなのだ。いつも以上に真っ赤になって、困った顔をするくせに最後には唇を許してくれるティエリアがとても可愛らしくて。

「ちゃんと周りは見てるから、気にしなくて良いんだよ。」

そう言って、ぐいとティエリアの細い腰を引き付ける。驚いたように、頬を羞恥に染めた顔を見下ろした。

「お、お前…まさか、」

「ん、そのまさか。」

体を通路の端に寄せて、ティエリアを壁に押し付けるようにしながら、覆い被さる。そのまま顔を近付ければ途端にティエリアが反射で逃げようとするのに気付いて、アレルヤはティエリアの腰を更に引き寄せた。

「ちょっ、やめ、俺はこういう場所で馴れ馴れしくするなと何度も…っ!」

「いや?」

「………っ、」

こう言えば、ティエリアは上手く返す言葉を知らなくて、すぐに口ごもってしまう。そんな初々しいティエリアを酷く気に入って
いるアレルヤは、ありがと、大好きだよ、とティエリアにしか聞こえない声で囁いてから、そのふっくらとした唇に自分のそれを重ねた。

(ロックオンにからかわれた、っていうのは嘘だけど、好きなのは本当なんだよ。)

だから許してね、
君につく小さな嘘は今日だけ、だから。





Mischievous Kiss



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