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□きみのせい
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経済特区日本に位置するエージェントのホテルの一室で、ティエリアは無駄に広いキングサイズのベッドに腰かけ、真っ暗なテレビの画面を見つめていた。その隣には、同じくティエリアの横に座ったアレルヤ。
無言のままこの状況で、既に30分が過ぎた。アレルヤは手にしていたペーパーバックをもう三度は目を通してしまっていて、いつまでたっても微動だにしないティエリアに目を移した。

「ねぇ、ティエリア。どこかに行くとか、何かするとか、しない?」

「しない。」

「……そう。」

はぁ、と溜め息をついても、ティエリアは全く反応もしてくれなくて、アレルヤはいよいよ退屈になった。今回は二人きりのミッションだから他の誰かと話をしてくることも出来ないし、もし出来たとしても、やはり恋人であるティエリアと一緒にいること以上に楽しいとは思えなかった。

「…あと何分?」

「30分だ。」

現在、ティエリアは30分後にあるという、なんとかという名の電化製品の特集番組を心待ちにしていた(アレルヤには興味のわく分野でないので詳しくは分からない)ティエリアが地上に
降りた時の数少ない楽しみであるとはいえ、面白くない状況であるのは確かだった。

「……あのさ、その番組が始まるまでの間はティエリアも暇でしょう?」

「まぁな。」

「じゃあ、暇潰し、しても良い?」

そう言って笑いかけてやれば、ティエリアが怪訝な目でこちらを見てくる。

「ティエリア?」

「…………少しの間なら、許す。」

ふい、とそっぽを向きながら、ティエリアが許しをくれる。きつい性格だとよく称されるティエリアだが、やはりアレルヤ相手であればそのガードも緩むようで、簡単に了承を得られた。その事実に、目の前にいるティエリアがとても愛らしく見えて、アレルヤはティエリアの細い腰を優しく、しかし確かな強さで引き寄せる。

「………ちょっ、」

待て、とティエリアが口にする前に、アレルヤはウェイトのないティエリアの身体を抱きすくめてしまった。驚いたように、ティエリアがアレルヤを見上げながら何度も瞬きを繰り返す。それから、ぱっと頬を薔薇色に染めた。そんな一連の様子が酷く可愛らしくて、アレルヤは抵抗しようと弱い力で押してくるティエリアの腕ごと、ぴたりと体を密着させる。近付いたティエリアの、さらさらと流れるビロードのよ
な髪の甘い匂いが芳って、アレルヤは沸き上がってくる熱を誤魔化すように、髪の合間から覗く白い耳たぶに、弱く歯をたてた。

「…っ、あ、れるや…何を、」

「暇潰し、だよ。これなら僕も楽しいし、ティエリアも時間を有意義に潰せるんじゃない?」

「……っ、」

ティエリアからの否定の言葉はない。いや、言葉を口に出来ないという表現の方が正しいだろう。アレルヤがティエリアの弱点でもある耳に舌を這わせ、中に舌先を差し込むという行為をしている間、ティエリアはただただ声を我慢するのに神経を使っているのだ。
そしてまた耳たぶを甘噛みしてやれば、腕の中の身体がびくりと震え、んっ、と小さく声が漏れる。それからアレルヤの胸に顔を埋めるようにされれば、忽ちたいして強くもない理性の糸はいとも簡単に途切れた。

「ティエリア…っ!」

「…ふ、……んうっ」

強引に顎に手をかけ、口付けをしながらティエリアの身体を押し倒す。すでに力が入っていなかった身体は簡単にベッドのシーツに埋もれたが、ティエリアが驚いたように目を見開いた。アレルヤが何をしようとしているのか、気付いたようである。

「ごめんね、ティエリア…」

たぶんこのままでは30分後の
テレビ番組には間に合わないだろう。しかし、十人並ではあるが可愛すぎるティエリアのせいなのだ。





きみのせい



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