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□まい でぃあ!
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「アレルヤ、待っていたぞ。」
「え…?」
プトレマイオスの食堂に入ってすぐだった、そう声をかけられたのは。その相手はガンダムヴァーチェのパイロットのティエリア・アーデ。所謂、同僚なのだが、アレルヤにとっては片想いの相手でもある。今まで幾度もの死線を乗り越えてたどり着いたこの場所、CBで、まさか普通の人間のように誰かに恋をする日がくるとは思っていなかったが、彼の人を目にする度に高まる胸の鼓動は、たぶん恋なのだ。
そんな彼が、自分を待っていただなんて。アレルヤは意中の麗人を前にして、内心とてつもなく焦った。
「え、と…何で僕を待ってたんだい?というか、君の方が早くにトレーニングルームから出ていったよね。」
だからもう、昼食はとっくにとり終えた後だとアレルヤは思っていたのだ。しかし、ティエリアはアレルヤの言葉に、不思議そうに首を傾げる。
「そうだ。君は規定時間を終えてもまだトレーニングを続行していた。だから待っていたんだ。」
何かおかしいか、と視線で問われるが、アレルヤが聞きたいのはそういうことではなかった。普通に考えれば、ティエリアがアレルヤを待つ理由なんてないのだ。――悲しいことに
。
「えっと…、僕に何かして欲しいこととか、あるの?それとも、訓練中に何かミスをしていたかな?」
「いいや、ミスはなかった。前者だな。」
「…頼みごと?」
「そうだ。」
真っ直ぐに見上げてくるティエリアの綺麗な緋色に、アレルヤはどうにか平静を保ちつつ、なに?と聞き返す。
「…昼食を、」
「昼食?…あ、もしかして、何か作って欲しい、とか?」
憶測だけでそう言えば、ティエリアが無言でこくりと頷く。そんなティエリアを見て、アレルヤは少し複雑に感じる。なぜ複雑なのかと言えば、味気のない物や時には栄養剤のタブレットを食事としてとっていたティエリアがそれを心配して駄目元で出してみた自分の料理を気に入ってくれたのは嬉しいが、そこには少しだけ作為も混じっていたのだ。最近、ロックオンが刹那の、端的に言えば餌付けに成功したと耳に挟んだので、自分もしてみてはどうかと。
しかし、やはり嬉し
いものは嬉しいに決っていて。迷惑か?と聞いてくるティエリアがそれはもう可愛く見えて、アレルヤは焦って首を横に振った。
「ううん!迷惑だなんて、そんなこと絶対ないよ!!すごく嬉しいくらいだ。」
そう言ってやれば、ティエリアが安心したように息を吐く。余程アレルヤの料理が気に入ったようだ。
そこで、これまた羨ましいと思っていたロックオンと刹那が二人でいた光景を思い出す。
「あの…じゃあさ、僕、頑張ってこれからも料理作るから、一つだけお願いしていいかな?」
「なんだ?」
「できる時だけで良いんだけどさ、一緒に食べて欲しいんだ。ご飯。…誰かと食卓を囲むって言うのかな?理想なんだ、そういうの」
もちろん“誰か”とはティエリア限定だが、それは言わずに。アレルヤの言葉を聞いて、考える仕草をしていたティエリアはしばらくの後、「そのくらいで良いのなら、善処する」と答えてくれた。
「本当…!?」
「ああ。こんなことで嘘を言う筈がないだろう。」
それに、そう言ってほんの少し、いつでもティエリアを目で追っているアレルヤにしか分からないくらいの変化で微笑んだティエリアに、アレルヤは言葉
を失った。
「それに、他の者なら遠慮したいところだが、君との食事は楽しそうだ。」
まい でぃあ!
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