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□1.誰にでもスキだらけ
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アレティエ+刹












「何…してるの?」

小さな電子音と共に食堂の扉が横に滑って開く。狭い厨房の中でティエリアのデザートに、と思ってせっせと甘いカラメルソースたっぷりのパンナコッタを作っていたアレルヤは、開いた扉の方にちらりと向けた目を見開いた。

そこには、ティエリアがいて。いつものアレルヤなら大切に大切にしている大好きな恋人の姿を目にすれば、何をおいても笑顔で声をかけ丹誠込めて作った料理を振る舞うのだが、今日は完璧に声をかけるタイミングを逃した。

ぱた、とスプーンに乗せたカラメルソースが溢れる。

「何、とは何がだ?それより腹が減ったのだが、」

どうにかしてくれ、とティエリアが腕を引っ張ってくる。こうして頼ってくれる仕草はとても嬉しいし、もっと沢山甘やかしたくなる。
しかし、だ。今はそんなことより重要なことがあった。

「えと、ね。…その…腰の、」

「ああ、これか。」

見て分からないか?とティエリアが自分の腰に巻き付いているものに視線を落とす。
アレルヤもそれに倣って、視線を下にずらした。

「せつな、だね…」

「ああ、刹那だ。」

二人見下ろした先の刹那は、なんだ、とアレルヤを見返す。しかし、ぎゅう、とティエリアの腰に手を回し、引っ付いたままだ。

「……何してるの?刹那、」

「ティエリアが、寒いと。」

その言葉に、ティエリアがこくりと頷く。

「大体だな、食堂の設定温度は低すぎるんだ。」

そう言うティエリアの気持ちはアレルヤには分からないが、確かに食堂のエアコンディションは寒がりなティエリアからすれば少し設定温度が低いかもしれない、と思う。それぞれの個室と違って、皆が利用する食堂は温度設定が一定なのだ。
しかし、だ。それではアレルヤのもやもやは晴れなかった。いくらアレルヤも弟のように可愛がっている刹那とは言え、ティエリアが他の人と触れ合って…ではなく、他人を腰に巻き付かせているだなんて、あまり楽しいものではなかった。ティエリアは刹那に対して警戒心というものがないのではないか、とも思う(まぁ、そんなもの必要ないのだが)

「でも…なんで刹那なの?」

君が僕にひっついてちゃ駄目なのかい?と思いながら聞いてみるが、ティエリアは至極あっさりと
している。

「刹那・F・セイエイは体温が高くてちょうど良いんだ。」

要するに子供体温だな、とティエリアが一人納得するように言えば、ティエリアの背から顔を出した刹那が「俺も、ほしい。」とアレルヤが作っていたパンナコッタに視線をやりながら言う。それに同調するようにティエリアも「相変わらず君は料理の腕だけは申し分ないな」と微妙な褒め方をしてくれた。
手に持ったデザートに無表情で、しかしきらきらと瞳を輝かせる子供二人に、アレルヤは息をつく。

(全く、二人揃って可愛いいんだから、)

と、アレルヤは可愛いもの好きな心を擽られ、自分以外の他人に隙を見せているティエリアを許してやることにする。
その代わり、とアレルヤはティエリアの耳に口を近付け、小さな声でお願いをしてみた。

「じゃあさ、僕にも引っ付いてくれたら、デザートあげるよ。」

「…?なぜだ、そんなことをしたら作るのに邪魔だろう。」

「良いから。だって刹那だけティエリアに引っ付いてられるなんて、妬けちゃうもん。」

ね、だめ?と笑顔で聞いてみれば、「仕方がないな、美味しく作れよ」と眉を寄せながら言われる。
了解、と答えれば、ティエリアが背中から細い手を回して抱きついてくる。こんなに素直なのは寒いからなのか、それともお腹が減ったからなのか。どちらにせよティエリアの体温を感じていられるのはとても嬉しいことには変わりはないので、アレルヤはさらりと触り心地の良い上質な絹糸のような髪に手をおいてから、作業を開始する。
そして、そんなティエリアの腰に引っ付いたままの刹那が「アレルヤ、俺の分も頼む。」と言ってきたので、それにも笑ってオッケーサインを出してやった。


この客観的に見ればおかしなマイスター三人の団子状態は、食堂に姿を見せたロックオンがすっとんきょうな声を上げるまで続くのだった。











誰にでもスキだらけ





可愛い感じ目指して物凄く間違えました^^


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