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□慌てて離した手
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「もう一人の転校生は、って?」

「え、あ、ああ言ってなかったっけ?僕も転校生なんだ。この春から。」

君と同じ三年生だよ。そう言ってえへへ、と恥ずかしそうに笑った男を、俺は呆気にとられて見た。
よく笑う奴だ、そう思った。刹那とは違う。だから、自分とも全然違う。

(…転校生?おなじ?)

「……」

「クラスも、同じなんだよ。折角だから、一緒に行こうと思ったのに、全然職員室にティエリアが来なかったから、迎えに来ちゃった。」

「…意味が分からない。そんなことをしては、君まで先生に目をつけられるだろう。」

そう突き放すように言っても、目の前の男は「いいの、そんなこと」と言った。

「だってね、君のこと聞いたら、いてもたってもいられなくなっちゃったんだ。」

「俺の、こと…」

「うん。ごめんね、先生達が、職員室で話してたのを偶然聞いちゃって。僕も、同じだったから。その、親の事情で振り回されてるとことか。」

「…それは、同情か?」

そう俺が言えば、男はちがうよ、と直ぐ様首を振った。その顔が今までにない位に寂しそうで、俺は、ああ、同じなんだ。と思った。
何度も繰り返される出会いが苦しくて、別れで心を痛めるのが怖くて。少しずつ、臆病になる。自分を知らない人間ばかりの中に入っていくことに、自分が去っていった後の人々が自分を忘れていくことに。それでも、逆らうことなど考えてはいけないのだ。
違いすぎると感じていた目の前の人間が俺と同じ目をしていることに、気付いてしまう。

「…でも、同情だと思ってしまったなら、謝るよ。」

「……」

ごめん、またその言葉が聞こえる前に、俺は衝動で「名前を、」と聞いていた。え、と男が首を傾げた。

「名前だ。君の名前。君だけ俺の名を呼ぶなんて、不公平だ。そうは思わないか。」

「怒って、ないの。」

「質問に答えろ。」

ぱちり、と男が目を瞬かせる。それから、ゆっくりとシルバーの瞳が優しげに細められた。こんなに優しく笑う奴は、見たことがなかった。俺の人を寄せつけない態度もなんともないという風に、口を開く。あれるや、そう言った。

「…あれ、るや。」

「うん、そう。アレルヤ・ハプティズム。僕だけ君に名前を呼んでもらえないなんて、不公平だと思うんだ、だから。」

名前、呼んで。できれば、友達みたいに、そのまんまの君で。
そう言われたことが、友達、と久しぶりに聞いた単語が嬉しくて(転校を刹那に知らせた時、「俺たちはいつまで友人だろうか、」と聞かれた時以来だった。)俺は口の中でその言葉を反復する。それから「ちゃんと、覚えた。…アレルヤ。」そう言えば、男は、アレルヤは、今度は嬉しそうに笑ってくれた。

「じゃ、行こっか。職員室。…まだ、いや?」

「…別に。」

二人して床に座り込んでいた状態から立ち上がる。手を出されたので、その手を掴んで立ち上がれば、手を出してきたのはアレルヤの方だというのに、また頬を真っ赤に染めていた。

「…いい加減、照れるのはやめてくれないか。」

「え、ぅ、ごめん。」

しかし今度は、すぐに手が離されることはなかった。なんなんだと思ってアレルヤを見上げれば、「じゃあ、慣れるね。ティエリアと一緒にいても照れないくらい、一緒にいる。」そう宣言される。ぎゅう、と手を握られた。
いや、そういう意味じゃない。と思った。男同士で手なんて握っているのは変だとか、何より男の自分を意識しすぎなお前がおかしいのだとか、どれだけ俺に付きまとう気だとか、言いたいことは沢山あった。
でも、結局、全部やめてしまった。

「友達に、なろうね。」

アレルヤが、そう言ったから。それに、誰かに手を握られるなんて、物心付いた時から考えても、初めてだったから。
アレルヤと一緒なら、あと少し、あと少しだけ頑張れる、そう思った。

いつからかこの関係が友達を飛び越えてしまうなんて、きっと想像もしていなかったけれど。







慌てて離した手




手を離してるのは一度目だけという、なんという失態orzいいんです我が家のアレルヤはスキンシップ大好きです。
とりあえず、ドラマCDで刹ティエが一緒に転入生、というシチュのみアレティエでやってみました微妙ですみません
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