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□隣同士がいちばん自然
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そしてあれから、そんな一方的な関係は続いていた。ミッション後にティエリアを部屋に呼べば素直に訪れ、施されるキスと愛撫と、そして熱を受けとめてくれる。しかし、それがだんだんと苦しくなってきていたのだ。



「ティエリア、」

自室のベッドの上の自分の横で今だ寝たままのティエリアを起こさぬように、そっと声をかける。ベッドの下には二人分の衣服が散乱していて、睡魔に襲われながらもティエリアが風邪などひかないようにと寝る間際に身体を包んでやったアレルヤのカッターシャツだけを着たティエリアの格好は昨日も散々熱を交換しあった後だというのにそれがぶり返しそうになるくらいに際どいものだ。

「んぅ…、」

ティエリアが眉の間にきゅっと皺を寄せたが、その後にまた安らかな寝顔に戻る。可愛い、とさらりとした手触りの髪を一度撫でてから、アレルヤはベッドから足を下ろした。ティエリアがさっきみたいな仕草をする時は30分以内に起きる可能性が高いのだ。
それまでに支度して、部屋を出なければいけない。恋人でもない相手と朝を向かえるなんて出来ないからだ。だって、どんな顔をして何を話せば良いのか分からない。
“自業自得”だった。
こんな後にも前にもいけない関係をつくったのは、ティエリアと普通の恋愛が出来なかった、自分のせいなのだから。

「大好き、ティエリア、」

情事後ティエリアが眠った後に繋いだ手は離れてしまっていて、部屋を出る前にもう一度だけ絡めてみる。
指先はひどく冷たかった。ティエリアが寒がりなのを知ってる。空調の温度設定を何度も真剣な眼差しで見ていたのを知ってる。寒い夜は足を折って丸まるみたいにして寝ていたのも知ってる。支給品は薄いからと地上で買ってきてあげた毛布をこんなものいらないのに、と言いながら受け取った君を知ってる。毛布をぎゅっと握った君が僕に喜ぶ顔を見られたくなかったのも知ってる。

「好きすぎて、堪らないのに、君に伝えられないのが辛いなんて言ったら、君は怒るのかな?」

ねぇ、こんなにも僕が君を見ていたって、君は知ってる?







***

食堂で、自分の分とティエリアの分のコーヒーと朝食を用意する。ティエリアは朝食べられないから、いろとりどりの野菜が入ったサラダとヨーグルトに果物が沢山入ったデザートのみだ。この量でさえ、食べさせるのに苦労したものだ。
それらを食堂のカウンターのところに置いておく。ティエリアが来なかった時のことを考えている自分は臆病で嫌だとアレルヤは溜め息を吐いた。

数分後に身支度を整えたティエリアが現れて、アレルヤの姿を視界に捕えてから、カウンターに置かれた朝食を睨むように見ている。現在、自分のお腹と相談中なのだろうと予想して、頬が緩む。また情けない顔をして!とティエリアに叱咤されることを考えても、微笑ましいのだから仕方がない。
決心が固まったのか(ティエリアは朝食に対しても全力投球だと常々思う)トレイを持ったティエリアがアレルヤの座っているテーブルに近付き、隣の席に腰を下ろす。おはよう、とここでやっと挨拶をすれば、生のニンジンは食べられないと言っただろう、と怒られてしまった。ティエリアの皿からアレルヤの皿へニンジンとピーマンが移動する。なんというか、隣というのは便利なものだと考えてから、気付く。

「そういえばティエリアは、なんで僕の隣に座るの?」

「は?」

前に聞かれたことのある質問を返せば(確か聞かれた時はきちんとした答えを返せなかった)ティエリアが首を傾げた。なんでそんな事を聞くんだ、という風に。
それから、考えてもみろ、と言われた。





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