log 2

□朝、隣に君がいる
1ページ/2ページ

ティエリア視点。甘。






瞼の外が眩しい。
こんな感覚は久しぶりで、ティエリアはそっと重たい瞼を押し上げ、上半身を起こした。クリーム色のカーテンは一応は遮光になってはいるが、やはり朝日の強い光に負けて、室内を明るく照らしている。

かたかたと、窓が揺れる。
風が吹いているのだ。
ちちち、と小さな声が重なって聞こえる。
鳥達が会話を交しているのだ。
遅れて、ざ、と波の音が聞こえた。
ああ、昨日見た湖が近い。


休暇としてやってきているここは、小さなコテージだ。もちろん発案者はロックオンで、心身共にリラックスが必要でうんたらかんたら言っていたが、早い話がとにかくマイスター達を連れだしたかったのだ。最後まで拒否を示したティエリアだが、この場所が人の寄り付かない郊外の森の中であること、そしてアレルヤの「ティエリアが行かないなら、僕も行かない…」に負けたのだ。正確にはその寂しそうな表情に。この場所に来るのを一番楽しみにしていたのはアレルヤなのに、ティエリアに合わせてそれさえ我慢しようとするアレルヤの一途さにも。

「君は、いつまでたっても馬鹿だな、」

その言葉は、隣のアレルヤにかけられている。
そして隣とは、ベッドの上の隣、だ。アレルヤはまだ寝ている。というか、寝起きの悪いアレルヤはちょっとやそっとでは起きないのだ。もちろん、ティエリアの世話を焼く日――たとえばティエリアの朝食を作らなければいけない地上の朝などは根性で起きる、というか気になって仕方がなくて自然と起きてしまうらしいのだが、なにせ今朝の朝食当番はロックオンだ。まだ当分、目を覚まさないだろう。

「まったく、お前はいくつなんだ」

人のベッドに夜中勝手に潜り込んでくるなんて、とティエリアはアレルヤの頬を摘んだ。部屋も一人一部屋与えられているのに。アレルヤの逞しい腕がティエリアの腰に回り、そこへ額を押し付けながら、へにゃりと表情を緩ませる。まったく、普通にしていたら端正な顔立ちも台無しだ。

ああでも、そんな幸せな顔をするほどに自分が幸せを与えられているというならば、それはとても嬉しい。
ティエリアがそう思い、アレルヤの頬をつねるのをやめてそっと其処を撫でてやれば、その瞬間ノックもなしに扉が開いた。
その向こうには、朝から無駄に元気なロックオン・ストラトスだ。

「おーいティエリア!お前目玉焼きは半熟でも…」

そして、固まった。


「………」

「………」

「………」

「……よ、」

「?」

「良かったなアレルヤ!!!やっと夢が叶って完遂したん」

ばし、とロックオンの顔に言い終わるより早く枕が飛んだ。もちろん投げたのはティエリアだ。不埒な口は無理矢理塞ぐに限る。

「何がですか!な に が!!おかしな事を言わないで頂きたい…!」

「いや、だって前からアレルヤに相談されてたんだよ。ティエリアと寝た……げっ!」

次に飛んだのはアレルヤの枕だ。ティエリアの腰に腕を回しまだ寝たままだったアレルヤの頭の下から取ったのだ。今回は素早く避けたロックオンに、小さく舌打ちする。

「アレルヤの馬鹿な相談を真に受けないで下さい!それに、俺とアレルヤはそういう関係じゃない…っ!」

「いや、だって一緒のベッドで起きてるだろ。それにアレルヤ上半身(しか見えないけど)裸だし…」

「こいつは寝る時こうなんですよ!」

「へぇ、よく知ってるなぁ…流石アレルヤと一夜を共にするだけあ……うおわっ!!」

最後に飛んだのは目覚まし時計だ。がしゃん、と壁に激突するのを横目で見ながら、「いや、これは怪我するから!」と焦りまくっている。


「馬鹿なことばかり言うからです!目玉焼きはどっちでも良いからもう出ていって下さい!」

「へぇへぇ、照れちゃって可愛いことで」

「煩い…っ!!」

もう投げるものが(アレルヤくらいしか)ないので出ていくロックオンを睨みつけるしか出来ない。
そこで腰の辺りに顔を埋めたアレルヤが小さく声をもらしたので、やっと起きたかと視線を落とす。しかしまだ目は閉じたままだ。さっきの騒ぎでも起きないのか、と少し呆気にとられる。

「んぅ〜…な、に」

「いや、たいした事じゃない。まだ寝ていて良いぞアレルヤ」

うるさくして悪かったな、そう静かに言いながらさらりと髪を撫でてやれば、また寝息が聞え始めた。まだもう少し、この時間が続くのも悪くない。




次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ