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□僕にも笑って
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「えっと…、食堂のご飯じゃティエリアの口に合わないらしくて、だから地上に一緒に食べに行こうかって話したら、断られちゃいました」

デザートの話は省略する。ティエリアは自分が甘いもの好きなのを隠したがっているようだし、何よりアレルヤももう少し二人だけの秘密にしておきたかった。頼まれたわけではないから、勝手に。

「ふぅん。まぁ、ここの食事は味気無いっちゃぁそうだよな。にしても、アレルヤは優しいな」

「え、何がです?」

「あのティエリア・アーデに食事を誘うなんて、な。そんな気使ってやるやつ、お前以外にいないよ」

そんな人物なんていたら困る、とアレルヤは思った。ライバルではないか。

「そんなこと、ないですよ。貴方は僕を買い被りすぎなんです」

「そうか?でも俺はアレルヤのそういうとこ、良いと思うぜ。他の奴らじゃ出来ないことだ。お子様達は気を使うことを知らんし、誰にも平等に優しいなんて他のクルーだって難しいかもな」

「…それは、どうも」

ロックオンには悪いけれど、平等に優しい、なんて嘘だとアレルヤは思った。だって、ティエリアには最大限に優しくしたいと思うから。
歯切れの悪いアレルヤをおかしいと感じたのか、ロックオンがテーブルに肘を付き薄く笑ってアレルヤを見た。

「何悩んでんのか知らないけどさ、俺はアレルヤのそういうとこ貴重だと思うし、」

「…?」

そこで切れてしまった言葉に、アレルヤは首を傾げる。ロックオンが言葉に詰まるなんて珍しくて、アレルヤは心配になった。自分は何か変なことを口ばしっただろうか。

「ロックオン?どうしました?」

「あーいや、悪い」

言いにくいこと、言おうとした。小さくそう言ったロックオンの言葉が理解できなくて、アレルヤはますます困る。

「え…と、僕とは話しにくいってことですか?」

そう言ってみれば、まさか!とロックオンが大慌てで言った。そして手振りで何かを伝えようとする。いかにアレルヤといると楽しいか、を力説されてしまった。珍しく焦る様子がおかしくて、アレルヤは笑ってしまう。
ロックオンといると、自然と楽しい気分になれる。ティエリアといる自分は緊張してばかりで、言葉選びが慎重になりがちだ。ティエリアに嫌われたくなくて、何より好かれたい。だから空回って、失敗する。でも、ロックオンとならそんなことがない。
気の合う友人と、恋焦れる相手というのは一緒にいて楽しいと感じる意味が違うのかもしれない。

「あーだからだな、アレルヤとは一番話しやすいから話しづらいというか、だな…」

「ふふ、意味が分かりませんよロックオン。でも貴方の一番の友人になれたなら嬉しいです」

「ゆうじん、ね…」

「ええ。ティエリアとは友人にもなれなかったから」

「……ティエリアと、友達になりたかったのか?」

「?はい、まぁ」

苦笑に近かったロックオンの顔が何故か晴れていく気がした。ティエリアと友人になれなかった話の、どこが面白かったのだろうか、とアレルヤは不思議に思う。
確かに、アレルヤはティエリアとよき友になりたかった。スムーズなミッション遂行の為にも。でも今は、恋人になりたい。友達から始めましょう、なんて言えない。友情から発展する恋に憧れる間もなく、恋愛感情をもって彼の一番になりたい。一番の友達なんて、真っ平ごめんだ。

「そう、か。俺はてっきりお前はティエリアのことが…」

そこでまたロックオンが言葉を切る。アレルヤはロックオンもまた他のクルーのように、アレルヤがティエリアのことを嫌いだとでも思っていたのか、と考えた。
本当は、みんなにティエリアは僕のものだ!って宣言して回りたいくらい好きなのだ。

「…じゃあさ、アレルヤ」

「はい?」

「次は久々にお前と組む予定のミッションだろ?その前日から地上降下になるし、ミッション前日だが二人で食事にでも行かないか?ティエリアには断られたことだし…どうだ?俺はお前と食事するのが一番楽しい」

「もちろん良いですよ。楽しみにしてます、ロックオン」

前にリヒティに聞いた美味い店が、なんて楽しそうに話を続けるロックオンの言葉に耳を傾けながら、自分も言えればよかったのに、とアレルヤは思った。
君と一緒が一番楽しいと、ティエリアにそう言えたなら良かった。デザートなんて、ただの口実だ。君といたかった。










***

翌日、アレルヤはロックオンに紹介された店でロックオンを待っていた。マイスター達は別々に地上に降り、明日はミッション遂行日となる。
その前日である今日の夕食を二人でとる為だ。ぼんやりと、静かな店内に溢れる夕焼けの色を眺める。ティエリアの瞳の瞳の方がずっと綺麗だ、なんて考えた。



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