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□トレモロの崩壊
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「…武力介入を、する。戦争を、武力でもってなくす。…そこに関わる人間を危(あや)めてでも」

「………」

理不尽だ、と思った。平和を願っているのに、それだけなのに、…それだけなら誉められることなのに、アレルヤは傷付く。自分達ばかりが、世界から咎を受ける。
世界の幸せを願う僕らは、誰から幸せを与えられるのか、分からない。

「………君は、世界に幸福を齋しているんだ。それが苦しいなら、……俺が、…おれが、君を幸せにでも何でもするから、弱音を吐くな…!」

はっと、アレルヤが瞳を開く。それから、泣きそうな顔で、身体を離してきた。

「君は、君はとても強いんだね。ティエリアが、そんなこと言うなんて、予想外だよ」

「俺は、弱い奴が嫌いだからだ」

「…でも、そんな弱い僕を助けてくれるんでしょう?ティエリアが」

アレルヤの大きな掌がティエリアの細い両肩を覆う。ゆっくりと腕を撫でられて、ティエリアは息が詰まった。さっきまでとは違う。そう思った。
先程までは、子が親に甘えるような仕草だったのに、これではまるで、アレルヤが親の愛情ではなく、ティエリア自身の心を欲しているみたいだ。

「ティエリアは、強いよ。こんなに、ティエリアはこんなに綺麗で、力を入れたら折れてしまいそう身体で、僕を支えてくれるんでしょう?」

「…っ、…やめろ、俺をそういう対象として見るな…っ!」

「なぁに?そういう対象、って」

アレルヤの悪戯な笑顔が腹立たしい。復活したならしたで、さっさと離れてくれれば良いものを。
ぐい、と掴まれたままだった腕を引っ張られる。今度はアレルヤの方に引っ張られたから、頭の上から降って来るシャワーの水滴が髪にかかる。アレルヤの愛機と同じ色のパイロットスーツが濃く変色するのを見ながら、ティエリアはぼんやりとアレルヤの「嫌なら、今度は拒んで」という言葉を聞いた。

(嫌なら、だと?今までだって、ずっと嫌だった。でも、ほうっておけなかったのだから、)

しかたがないじゃないか。そんなことを考えながら、アレルヤの端正な顔が近付いてくるのを見ていた。真っ直ぐ自分を捕える瞳が恥ずかしく思う。見たくなくて、瞼を下ろす。
それを了承ととったのか、またアレルヤに抱き締められた。今度はそれだけではなく、しっとりと唇を重ねられる。
頭の上からは、まだ冷たいシャワーの水が降り注いでいる。髪が濡れ、頬を幾筋もの水の筋が伝う。それなのに、身体は熱くほてっていた。むさぼるようなキスの合間でそっと目を開ければ、アレルヤがまた、泣いているのが見えた。
ああ、なんて愛しい。




トレモロの崩壊



(弱くてもかまわないんだ。人を殺す度弱くなるその優しい心に、惹かれたのだから。)








―――――――
題名のトレモロは異なった二音を反復させる、規則的に繰り返す等の意味をもつ音楽用語なので微妙に意味からずれてます^^;
とにかく甘えるアレルヤとシャワーの水に打たれながらのキスを書きたかったようです。

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