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□夕暮れと引き算、それからキスと。
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アレティエ前提の刹ティエ…?
とりあえず一期。せっちゃん視点。










待ち合わせの場所である公園に一番に現れたのはティエリア・アーデだった。一番に、とはいっても間違えて待ち合わせ一時間前にこの場所に到着してしまった俺の方が早かったのだけれど。
ティエリアは公園の入り口でくるりと辺りを見回していた。この公園は結構な広さがあって、少し離れた場所には散歩コースや城を模した遊具が併設されている。しかし夕暮れが近付いた公園に人影は少なく、ティエリアはすぐに俺に気付いたようだ。ゆっくりとこちらに足先を向ける。

「お前だけか?」

近くに来た途端言われたティエリアの言葉が「アレルヤはいないのか」に聞こえて、俺は溜め息を吐きたくなった。なんだか最近、おかしいのだ。ティエリアがアレルヤと二人でいるのを見る度に、……いや、考えるのはよしておこう。どうせ、毎回同じ感情に行き着くのだから。

「……まだだ。もう少しで来るだろう」

「そうか。それならば、待つしかないな」

少し残念そうにした(そう見えるのは気のせいだろうか)ティエリアだったが、それなら、とぽつりと言った。

「あれに、乗ってみたいのだが」

…あれ?不思議に思って、ティエリアが指差す方を見る。

「…ブランコ?」

「そういう名称なのか?まぁいい、行くぞ」

そう言って、ティエリアが先に歩き出す。その後を追えば、「昼間に通りかかった時に子供が乗っているのを見たんだ」と歩きながらティエリアが言った。それはブランコに乗りたい理由にはなっていない気がしたが、黙っておいた。

「アレルヤが、子供のうちに乗りたかった、と言っていた」

「…そうか」

木の板に腰を下ろすと、き、と軋む音がした。独特の鎖の鉄の臭い。浮遊感。そんなものを感じながら、ティエリアはアレルヤに近付きたいんだな、と思った。隣でティエリアが「お前はロックオンみたいに人を馬鹿にしないから、楽だ」そんな嬉しいことを言ってくれたが、それにも何も返さなかった。ティエリアはアレルヤに近付きたいんだ、ともう一度、自分に言い聞かせるみたいに呟いた。

真っ赤な夕日に照らされたティエリアの横顔なんて綺麗すぎて見ていられなくなって、視線を反らす。いつもより可愛いかも、なんて思うのは、きっとティエリアが少しだけ楽しそうにしているからだ。

(…あ、)

反らした視線の先で、あるものを発見した。もの、というか人だ。二人。若い男女だ。木の陰だがこちらからは隠れていない。こちらには気付いていないようだ。
特に面白いものでもないが、なんとなく“それ”を眺める。絡められる指と指。近付く顔と顔。頬同士が触れ合って、何事か楽しそうに囁き合っている。それを見ながら、ティエリアにお前達もああいうことをするのか?と聞いたらどんな反応を示すだろうと、思考はそんな方向にばかり向かっていた。
ロックオンから仕入れた(というかあいつが勝手にべらべら喋った)情報によると、最近やっとアレルヤとティエリアの二人は正式に付き合いだしたらしいから、もしかするとキスもまだかもしれない。

(…違うな、)

まだだと良い、と思っているのだ。自分は。なんて諦めの悪い。
カシャ、と隣から小さな音が聞こえたのでそちらを向けば、ティエリアがブランコから立ち上がっていた。それから小さく「さっきのベンチに、戻ろう」と言った。そんなティエリアの白く滑らかな頬が夕日とは違う赤さに染まっているのを見てから(可愛い。可愛すぎる。)視線を戻す。
やはり、先程の二人がキスを交している。ティエリアもそれに気付いたのだろう。だから、ここを離れたくなったのだ。

「…そういえば、」

しかし俺はブランコに座ったまま、話を始める。ティエリアは少し戸惑った様子を見せた後、ブランコに後戻りした。しかし視線は足元に固定されている。

「ロックオンによると、一番キスしやすい身長差は15センチらしい」

「……今このタイミングでする話か?まったく、あの人は相変わらず余計なことばかり君に吹き込んでいるらしいな」

その口調が子供扱いしているようで、少しむっとした。だから、言わないでおこうと思っていた台詞が口から出てしまったのかもしれない。





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