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□君の全てが好きなんだ
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「あれティエリア…何か読みたい本でもあったかい?」

「ん…」

一番に宿題を終わらせたティエリアがアレルヤの本棚を物色している。アレルヤは本を読むのが好きだから、本棚の中身だけは豊富だ。
ごそごそと色々な本を手にとるティエリアにアレルヤは近付いた。後ろでロックオンが宿題を諦めたように転がった。

「どんな本が良いの?何か貸すよ」

「……血生臭いやつ」

「へ」

ぽつりと漏らされた言葉に、後ろでロックオンが吹き出した。
血生臭いやつ…?

「はははっ!あれだろ、なんとか殺人事件とか、ゾンビが追い掛けて来るやつとか、内臓系がぐちゃーって!」

「そう。人外が出てくるのなら尚良し」

「えぇえええ!?」

「無理無理。こいつの部屋は本は多いけど、血生臭い人が死ぬのは全くないぜ。あと、エロ本」

「な…っ、ハレルヤみたいなこと言わないでよロックオンー!!」

「はは、悪い悪い」

ロックオンが謝ったのと同時に、チャイムが鳴る。ハレルヤが帰ってきたようだ。「噂をすれば、だな。」そう言ってロックオンが立ち上がる。部屋を出ていく際にこちらを向いて笑った。…気なんて使わなくて良いのに。


「あの…ティエリア。ごめんね、本、なくって」

「冗談だ。君がそういうものを、読めないことは知っている」

これで良い、とティエリアがミステリーを一冊手にとる。「返しに来るから、」と。その言葉は、まるでまた来たいと言っているみたいだ。その真偽を問おうとティエリアを見れば、あることに気付いた。

「手首、」

「え…あ、ああ、中々治らないんだ。せっかく君が治療してくれたのに」

「治療ってほどじゃ…」

そう言いながらも、まだどこか引っ掛かる。確かにあの時、ティエリアをアレルヤが助けた時、ティエリアと仲良くなるきっかけを作ったあの時、ティエリアは手首に怪我をした。
しかし、そんなに長く治らないものなのだろうか。包帯まで新しくなっているし、とアレルヤは首を傾げた。

「…、それよりアレルヤ」

視線に気付いたティエリアが、捲れていたカッターシャツの袖を直す。
白くて細い手首が、なぜか脳裏に焼き付いた。

「昼の手紙、気になるか?」

「え…。そりゃ、気になることには気になる…けど。で、でも、ティエリアが言いたくないなら」

「ラブレター」

「……」

ぽつりとティエリアの口から出た一言に、心臓が跳ねた。
いやだ。

(……嫌だ?そんなこと、言える立場じゃない)

「そ、そうなんだ。ティエリア、綺麗だもんね」

「…それだけか?」

「だって、それ以外に」

「……もういい。まぁ、男子校だから嬉しくもなんともないがな」

そう言って苦笑するティエリアは、しかし何処か寂しそうだ。そんな顔、して欲しくないのに。でも、どうして欲しいのか、分からない。

(好きだと言えばいいのか、嫌いだと言えばいいのか、それとも、)

「ティエリア、…僕は、」

「アレル「…って、待て待て待て待たんかぁぁぁあ!!!おめぇら顔が近いんだよ!離れやがれ!今日眼鏡が来るなんて聞いてねぇぞロックオン!!!」

「俺かよ」

「当たり前だろ!お前は俺とアレルヤ、どっちの味方なんだよ…!!」

「え……俺は全面的に刹那の味方だ。そうだな、例え世界中が刹那の敵になったとしても」

「うるせぇぇぇえ!!」

お前が煩い、と小さく呟いたティエリアはもう普段のティエリアで、アレルヤはなぜか安心した。





――――――――

「なぁに、にやけた顔してんだよ」


今日(ちなみに次の日の放課後。)は、ハレルヤのさげすむような眼差しも言葉さえも全く効かない。
アレルヤの頭の中は昨日の夕食のティエリアで頭が一杯なのだ。

「だって…!あんな可愛らしいティエリア見れて僕幸せだよぅっっ『君の料理は相変わらず美味いな。幸せな気分になる』だよ!?君に食べて貰えた僕の料理たちの方が幸せものだよー!!」

「阿呆」

溜め息がちょっと痛いが、しかし今日はティエリアの家に呼ばれているのだ。幸せ気分いっぱいで何が悪い。

「もぅ、人のこと馬鹿にしてないで、ハレルヤは早くバイト行きなよ。また辞めさせられちゃうよ」

「うっせ。…って、眼鏡はどうした?」

「ん?用事があるからちょっと待ってて、って」

「?何の用事だ」

「えと、ラブレターの返事じゃないかな」

「な…っ!!」

酷く驚いた顔をしたハレルヤに、逆にアレルヤが驚く。ハレルヤがこんなに動揺しているなんて、ほとんど見る機会もない。

「あいつ、何一人でのこのこ行ってんだよ…」

舌打ちと同時に教室から出ようとするハレルヤを、アレルヤは慌てて呼び止めた。




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