睡眠御膳

□青臭い情と鳴る鎖
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きっかけとか

何が引き金だったとか

もう覚えていない

覚えてるのは貴方の…顔

そしてあの音…



今、片方の俺の手に捕まれているのは俺の想い人のルキアの細い


首。


その首を握る力はさほど入れてないが苦しそうな声がかすれて聞こえる

「あ………がぁ…」

丁度気管に指が当たっているのか息がしずらそうだ


少ししか力を入れてるだけでこの有り様なのだから…本気で力を入れたらどうなるかを想像してみた

歪んだ顔、体中が酸素を求め痙攣する様、そして最後には死ぬ―


きっとそれらの何もかもが美しく俺の目に映るであろう

今すぐにでも見てみたいが

その前に改めてルキアにこの状況を認識させておこうと思った

すっ、と手の力を弱め一時的に彼女の首を解放する

「…ぁ…!……ゴホッ!!」

突然供給を止められていたものが入り込み、むせていた

先程まで俺がおさえていた所に指を当て生理的にか、涙がにじんだ目で睨んできた

「…ハ…ァ……な……ぜ……」

先刻ので気管を痛めたのか言葉が風の音のように聞こえて聞き取りずらいが何とか“なぜ”と言ったのが理解できた


そんなのこっちが聞きたい

だから


『知らねぇ』


そう答えた

理由なんか本当にない

俺がルキアを好いているのは自分でも分かる

だが、別にこんな事をして自分の物にしようとかという類の思いはない

只、そうしたかっただけ

例えるなら何か通り物が通ったように


考えている間、下を向いていたので再びルキアに目線を戻した

ルキアは上手く動かない体を必死に動かしてどうやらこの部屋から出ようとしていた


俺はルキアの腕を強く掴み自分の方に引き寄せる

引いた拍子に倒れ

仰向けの状態になり

座っている俺のすぐ近くに来た

冷たく見下ろす

恐怖の念を込めて見上げられる

頭の芯や背筋に電気的なものが走った感覚が訪れた


ルキアに股がり体を動かせないようにする
また見下ろす

見下ろしながら手をかざす

また片手だけ

だが、この細い首ならそれで十分だろう

「ヒィッ!!ヤァ!嫌だ!」

本人は叫んでいるつもりらしいが俺にはかすれ声にしか聞こえない

首に手を再び添える
気管と血管を上手く絞めるように指を置く

そして力を入れる

ギリッ

「ぁ…が…」

ルキアの顔が歪む

あぁ綺麗だ

想像以上に美しい

心が満たされ……る?

満たされない

何で…

どうすれば満たされる

ルキアの顔を見る


あぁそうか


殺してしまえばいいんだ


ギリッ


「!!」


すでに声すら出せないようだ


絞める悶える歪ム…コワレル


ギ…リ……


変ダ


コレ以上


首ヲ絞メラレナイ


絞メル手ガ


動カナイ


気付ク


オレガ泣イテイルコトニ―


手ノチカラヲヌク




通り物が去った気がした



ポタポタとルキアの顔にそれが落ちる

ルキアは困惑している

既に苦しめていたモノは離れている

俺もルキアの上からどく

『行けよ…』



早く行ってくれ

そしてどうかもう俺と関わるな

頼むから

軽蔑しても殺してでもいいから

もうお前を殺さないように



なのに

なんで

お前はここから出て行かないんだよ

もう体は動くだろ

来るな

近付くなよ

そんな顔、俺に見せんなよ

「……………」

何言ってんだよ

聞こえねぇよ

『来るな……』


嫌だ

何で

俺を抱く

お前を殺そうとしたんだぞ

頼むよ

もうコレ以上

俺にお前を殺させないでくれ



また連鎖が始まる


ジャラジャラと耳元で音をたてながら


涙はとめどなく流れる


懺悔か


歓喜か


あぁまただ


また



オレガ



オマエヲコロシテイル




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