よろず・しろ

□がやがや、わいわい
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穏やかな、とても穏やかなある日。




『はい。俺上がりな、大富豪頂き』

「げっ!ちょ、兄ちゃん!そしたら私は…」

「ええと、大富豪が一位になれなかったら“没落”って言って自動的に大貧民になるんだったかしら?」

「おーしっ!大貧民脱出だぜ!残念だったなぁ、さやか」

「短い夢だったわね…」

「あはは…、さやかちゃんゴメンね。」

「うっそー!これからがさやかちゃんの恐怖政治が始まる所だったのにー!」


『怖い事言うなよ!』








さてさて、現状の説明と行こうか。

まず、ここは巴マミの家。
メンバーは、見滝原市の魔法少女全員と俺。
何故か、俺。

いつものお茶会って奴に、佐倉杏子が飽きて、なんかゲームがしたいとなり、
考えた末に、まどかが俺にヘルプを頼んできた。


「お兄ちゃん…何かいいものないかな?」

“は?トランプとかねーのかよ”

「マミさん持ってないみたい…」

“…あー、なるほど。じゃあ家のやつ持っていく。それでいいだろ?”


「う、うん!ありがとう!お兄ちゃん」



と、俺も試験勉強の息抜きに巴マミの家に、トランプ等を届けに行ったら、

「あの、鹿目先輩。私、トランプとかあまりした事がなくて……」

玄関で受け取りに来た巴が申し訳なさそうに言った。

『……まどかに教えて貰え』


「鹿目さんも、ちょっとルールがうろ覚えだそうです……」

『………うわ、あいつマジか』


「駄目、ですか?」


思うんだが、巴は人に対する頼み方がなってない。というか慣れてない。
他の奴らだったら、

“お兄ちゃん、お願い教えて!”

“さっさと教えなさい”

“兄ちゃん、頼むよー”

“教えるまで帰さねえ”


あ、何か悲しくなってきた。まどかとさやか以外で。
今の予想みたいに素直に正直に頼めばいいと思うんだよなー。


「あの、鹿目先輩……やっぱり駄目ですよね。」

『いいよ、やる。気分転換にもなるしな。邪魔するぞ?』

「あっ、はい!ありがとうございます」












……と、巴の家に上がって、冒頭に戻る。


「っだぁぁぁ!大富豪なんて終わりよ!終わり!」

「なんだよ、さやか。負けっぱなしだからって放棄は良くねーぞ」

「美樹さやか、五連敗目突入ね」

「んー…さやかちゃん、言葉がないや」

「ま、まぁまぁ美樹さん」



救済措置もあるルールで、
まさか、五連続大貧民を負う奴とかレアだろ。



「兄ちゃーん!何であたし勝てないのよー!」

『お前、強い手札とか最初に出すからだよ』

「え、だってその方が親になって早く上がりやすいじゃん」

『後の流れを考えろよ。お前が弱い手札に強い手札出して場が流れたって事は、他の奴らには中〜強の手札が残るの分かってるか』

「………?」


要領が悪い……


「つまり、序盤からフルパワーで魔女と使い魔達に突っ込んで、トドメを刺す前に力尽きるって事よ。美樹さやか」



ほむらからの、追撃は、
的確というか、少し前のさやかの狩りの話だった。


「んなっ、そんな事、な……い。
……あの節はすみませんでした」


俺はその時は、いなかったが。割と、さやかのフォローが大変だった。と、ほむらが珍しく愚痴ってたのを聞いていた。



「だ、大富豪は止めてさっ、他のゲームをしよう!ねっ!兄ちゃん、確かUNOも持ってきたんだよね!」

微妙な雰囲気が流れる前に、本人が切り替えを要望した。


「そ、そうだね!ずっとトランプだったもんね、UNOなら私分かるよ」

そしてその流れにまどかが乗った。


「お、UNOなら知ってるぞ」

自然な流れで、杏子も乗ってきた。半分が乗れば、流れは確定したも同然だ。
さやかが小さくガッツポーズをしたのを俺は見逃さなかった。


「また、教えて貰えるかしら、ごめんなさいね。」

「大丈夫ですよーマミさん!」

控えめな巴に先ほどとの態度とは打って変わった生き生きとしたさやかがいた。




『……俺もやるのか。』

きっとそうなんだろうなー。やらないって言った時を予想すると面倒臭そうなので、諦めの意味も込めて、鞄からUNOを取り出し、輪に入ろうとした時、


時が止まった。


比喩ではなくリアルに体感だ。



『……なんだよ。ほむら』


振り向くと、真剣そうなほむらの顔があった。

『魔女か?』

気配はないはずだが…一応聞く。


「いいえ…」

ふるふると首を横に振った。


『じゃあ、何だよ。わざわざ時間止めてまで』



膨れた顔で、ちらちらとこっちを見る、ほむらの顔は何だかさっき見たような。


『ああ、UNOのルール教えて欲しいのか』

「っ!」

『それなら、マミと一緒に教えて貰え。』

「貴方が私に教えなさい」


何だ、その無駄な威圧感は。


『は?』

「いいから、教えなさい」


盾に手を入れ今にも、武器を出しそうなほむら。待て待て、待て待て!

『…了解デス』

「それでいいのよ」

はあ、とため息をついて俺はほむらにルールを教えて、再びゲームに身を投じた。

今日はまだまだ長そうだ。
つーかさようなら、テスト勉強。








ちなみにUNOの敗者は、
ぶっちぎりでほむらだった。

「嘘よ、こんな、私が…」

「ほ、ほむらちゃん。顔に出過ぎだよ」


まどかに慰められる姿があったような。
なかっかような。



終わり
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