よろず・しろ

□この感情は多分君だけ
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廊下を駆ける音が聞こえる。

ぱたぱたとか、可愛い音じゃなくて、


(来たか……)



ドガガガガ!
という破壊的な音が執務室前で止まり、ドアが勢いよく開けられて、

勢い良すぎて閉まった。



そして、




「提督っー!MVP獲ったネー!」


金剛が突撃してきた。



「おいっ……戻ったら装備を外せと何回も、」


「ノー!一秒でも早く提督に会いたいが故ネー!」


こいつにドアを破壊され続けて云ヶ月……ドアない方がいいんじゃねと思っていたが、
最近は力加減を覚えたのか壊れなくなっただけ、マシか。



「提督っ、提督っ!ご褒美頂戴ネ!」

「はぁ?なに言って、つーか!抱き着くな!離れろ!重いんだよ」


「シット!女の子に重いなんてタブーヨ!」


「ふざけんなっ!お前の背負ってるもん重さどんだけあると思ってんだ!


だからあれほど、装備外してこいって……ん?」



瞬間、金剛の動きが止まり。
寄りかかっていた超弩級の重さは無くなった。



「っぷはっ、やっと離れたか、…金剛?」

急に大人しくなって俺の足元でしゃがみこんでいる奴に声をかけた。
いつもならすぐに離れない奴が珍しい…


「おい、金剛。どっか痛めていたのか」

既に速報として入っている簡易報告には無傷だったと聞いたが、


「………そ、」

「ん?」


いつも大きい声を出す奴が珍しくか細い声で呟く。


「装備を外したら、抱き着いていいって意味デスカ…」


金剛の顔を覗き込んだら顔が真っ赤だった。
初めて見るその表情に、呟いた言葉が頭に入ってこなく、

俺まで固まった。




「………」

「………」



金剛が僅かに上目遣いで俺を見る、



なんでそうなる!いやいや!俺は自分の身の危険を感じて言った訳で、誰も抱き着いていいって言ってねえよ!
そもそもそんなの関係無しにやってたろ!
変に意識してんじゃねえよ!!
くっそ!くっそ!


そんな葛藤を出すわけにもいかず、
とりあえず、

「わっ!何するネ!!」


乱暴に頭を撫でた。
わっし、わっしと撫でた。


いきなりの行為に金剛が顔を上げてこちらを見る。
ああ良かったいつもの顔だ。



「MVP獲得良くやった。ご褒美だ、嬉しいだろ」

「そんなハートがこもってないの嫌ヨ!!ていうか痛いネ!」

「装備付のお前に抱き着かれる俺の体の痛みだと思え」

「ウーーーー」


ジト目でこちらを見る金剛に一つため息をついて、一歩近づく

「提督?」

金剛が不思議がる。





両手を金剛の頬に添えた。


「て、提督っ!?」


そして、そのまま………
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