よろず・しろ

□球磨日和、ハズレ
1ページ/2ページ

今日も賑やかな声が響き渡る。

「てーとくー!!」

鎮守府の廊下を歩いていると後ろから元気のいい声で呼ばれた。




「電達か、遠征お疲れ様。」

「はいです!」

近づいてきた電の持つ報告書を受け取り、労いの意味も込めて頭を撫でた。

「あー電だけずるいっ!!」

「ずるいっぽい!」

それに反応して、雷と夕立も俺に近付く。

「皆お疲れ様。」

報告書に目を通しつつ空いた手で、幼さ目立つ少女達を撫でた。


そんな中、若干感覚が異なり反射的に下を見た。


「何してんだ、球磨」

ご丁寧に、しゃがんで身長を手の高さにあわせて。

「球磨も撫でて欲しいクマっ!」

「お前、遠征に関係ないだろ」

「関係ないけど、撫でるクマっ!」

膨れる頬を見てだだっ子か!と心の中で呟いて、
続けるだけ無駄だと早めに悟り心の中で更にため息をついて。

「明日の出撃頑張れよ」

棒読みそして、
やや雑に撫でた。

そんな仕草とは裏腹に、


「もちろんクマっ!頑張るクマっ!」
球磨は嬉しさがはじけたような表情をして、
頭の触覚(?)をブンブン振った。

「よし。……所で、」

「クマ?」

俺の手は未だに球磨の頭を撫でる。

「て、提督…いつまで撫でているクマか?」

「いや、何か…お前の頭の撫で具合が良いというか。
手にしっくり来て自然と手が動くような」


そう例えるなら、
「ぬ、」

「ぬいぐるみじゃないクマっ!!」

うおっ、先に言われた。
球磨は後ろに飛び、
一気に距離を置かれた。

「なんだよ。そんなに嫌か?」

手をワキワキしてみせる。

「うー、嫌じゃないけど…でも提督なら別に……な、撫ですぎないならいいクマっ!」

半ばヤケクソ気味の球磨が俺に頭を差し出す。
なんだこいつ面白い。

「…」

何も行動を起こさない俺に痺れを切らしたのか、球磨が俺を見上げる。

「明日の出撃で健闘したらな。」

ほんの僅かに頭を撫でて、電達の報告書を脇にかかえて
歩き始めた。

「電、雷、夕立ー執務室行くぞー」

俺たちのやり取りにどう接していいか分からず、廊下の壁の花になっていた三人を呼ぶ。

三人の足跡を背に、

「絶対MVP取ってやるクマー!!!」

球磨の気合の入りまくった叫び声に笑いを噛みしめながら歩き、
先ほどの球磨の嬉しそうな顔が暫く頭から離れなかった。



次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ