GB

□ 黒
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夏が終わる



ある雨の日の夜













● 黒 ●












酷く、降り頻る雨の中


蛮は普段着ない、黒の長袖に黒の長ズボンを身に着け、雨に打たれていた。





まるで喪服でも着てるかのようにも見えるその姿。


ぼんやりと空を仰いだまま目を閉じ雨を受け入れていた。











一人、雨に打たれていると目の前に闇に溶け込むもう一つの黒が。





珍しく本当に上から下まで黒い蛮の姿に目を細めつつも近寄り、そっと傘を差し出して傘の中に入れた。
近くでみると心なしかやつれ目元の隈が目立ち、顔が青白い。

「そんな所で何をされてるんですか?」
「……」
「風邪ひきますよ」
「……」
話しかけても返答なくただ問いかける相手に視線移して虚ろな瞳で見つめていた。




濡れた髪から滴り堕ちる雫


身体にまとわりつく服











「……ま」
「?」
「…このまま、真っ黒な闇に溶け込めねぇかな」
「…何かありましたか?」
「……」


赤屍の問いかけには未だ返答がない。
ただ、寒さか孤独か蛮は小さく震えていた。







普段の彼から想像出来ない程、なにかに怯えた瞳

そんな瞳が赤屍を映した










『その禁を破れば、お前はこの世から消える』






「4回目…」
雨に濡れ、冷えきった両手をそっと赤屍の頬に添えて呟く。
「存在自体が消える」
「…?!」
赤屍は小さく目を開いた。


「誰の記憶からも…この世からも俺自身が消えて無くなる」
「あなたはソレを望んでるんですか?」
「…望んでたらアンタはどう思う?」










なんで、俺はコイツにこんなこと聞いてんだ…?

自分がわけわかんねぇよ









ぐるぐると巡る思考を遮ったのはいつの間にか抱き締めてきていた腕だった。



「私の全てをかけて止めますよ。アナタを」




「赤、ばね…」
「…蛮‥」








耳元で小さく囁く。


名前を呼ばれるのは嫌いな筈のに何故か悪い気はしない。


寧ろあったかくて心地いい。








「とりあえず家へ来ませんか?」


相手の温もりに何もかもどうでもよくなって赤屍の問いに頷く。

そのまま赤屍は蛮の手を優しく引きその場を後にしたー…





































赤屍は意外にも世話好きで物好きだ…と思う。


わけわかんねぇこと言ってる俺を家まで連れて来てくれて、今は促されるまま風呂を借りてる。





シャワーを頭から被り、冷えきった身体を徐々に温めていった。








だけど、何処か冷てぇ


なんでこんなにも寒い?











ふと、脱衣所のドアを数回ノックし控え目にドアが開く音が聞こえた。

「美堂くん、此方に着替え置いて置きますね」


うっすらと扉越しに揺れる影。
言い終え出ていく影を追い衝動に任せて扉を開けた。


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