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□約束
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夢を見た
まだ一ヶ月ほどしかたっていない“あの日”の夢を…
●約束●
「――っ!!!」
夢にうなされ飛び起きる。
「またかよ……」
最近、夢ばかりみる
大切な人をこの手で殺してしまった夢
大好きだった…工藤邪馬人を。
落書きされたコンクリートの壁にもたれながら座り顔を伏せる蛮。
「ちっきしょ‥邪馬人…」
手を見ればあの日の残像。
「一か月か……」
あの日から
『蛮、乗れ!』
「‥‥くそっ!ンで…」
脳裏によぎる記憶と声。
忘れてはいけない忘れたい記憶。
あの、優しさ。
いつのまにか気付けば山奥にたたずむ廃屋の前に蛮は立っていた。
本当に無意識だった。
気付けばここにいた。
「なんで俺ここに…」
バラバラになったドアを跨ぎ一歩中へと踏み入れる。
「あの日のままだ……」
本当にあの日の
『これでいい蛮‥これでいいんだ‥‥』
「なにがいいんだよ」
めぐるあの時の邪馬人の声。強く拳を握り締めた。
「俺は‥‥」
ギッ
「…!」
「‥‥‥蛮!!あんた、よくも戻ってこれたわね!!!!」
現われたのは工藤邪馬人のたった一人の肉親、工藤卑弥呼だ。
「卑弥呼‥‥‥」
「きやすく私の名前を呼ばないで!!!なんで?どうして兄貴を殺したの?!仲間じゃなかったの?ねぇ、蛮っ!?!!」
勢い良く両手で蛮のむなぐらをつかむ卑弥呼。
その手は震え、目には涙がたまっていた。
『卑弥呼を頼むぜ‥蛮』
「答えてよ!!!」
「ああ、殺した…俺が」
恐くなって逃げてしまった事実。
殺してしまった真実。
すべては俺がが悪いんだ
俺が――
ド…ッ!!!
卑弥呼はすべての力を拳に込め、蛮を殴った。
揺らぐ視界。
「……」
口内は切れ、血の味に満たされた。唇も切れ顎へとつたう血を腕で拭いながら何も言わず立ち上がる蛮。
「あんたなんかに出会わなかったら兄貴は死なずにすんだのに…なんでアンタなのよ…っ、なんとかいってよ蛮…!」
ゆっくり顔を上げ卑弥呼を見た。
憎しみに震えたままボロボロと落ちてゆく止まらぬ涙。
何度、俺は人を苦しめるんだ…?
俺の所為で皆、
殺意、憎悪、孤独に埋もれてく
もう誰も傷つけたくないのに
出会わなければよかった…なんて今更思ったって救われるわけでもない。
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