GB

□Reset
2ページ/5ページ





ふと気付けばHTの何時もの席へと座っていた。





死んだ感覚も消えた感覚もない。

否、生きてる感覚もない。






不思議と今までが夢だったような気に襲われるが、感じ無さすぎる感覚にふと疑問を持つ。




カウンター越しには新聞を読む波児、皿を洗う夏実、洗い終わった皿を拭くレナが居た。

見慣れた光景だが、何かがおかしい…




「…あ、コーヒーの匂いがしねぇ」




ふと気づきポツリと呟いた。
自分の手を見つめ握り締めたり開いたりを繰り返す。






なにも感じない。





動作、呼吸、何一つ。










「これが…消える、か―…」


オカルトなんかは信じてねぇ

ましてや幽霊なんか所詮ヒトが作り出した念だ





そう思ってたはずなのに俺は未練でもあるのか?

何故“自我”はここにある?









「マスターこのコップどうしますか?」

ぐるぐる脳内に巡る思考を遮断した夏実の声。



「誰のかわかんねぇけど…少し埃被ってるみてぇだし一様洗っといてやってくれるか?」
「わかりました!」
「でも、ほんと蛮って誰なんでしょうね」



3人の何気ない会話。




「本当に“俺だけ”が残ったってわけか…ははっマジで洒落になんねぇよ」

リアルを感じ認識した瞬間笑いしかでなかった。

手段などわからない。








気が付けばまた




本当にたった、独りになっていた















ゆっくりと立ち上がり外へ出るためドアノブを握ろうとするもすり抜ける手。

薄々想像していてたものの、あって欲しくもない想像に小さく舌打ちをする。






無言でドアをすり抜け、外へ出た。空は曇り今にも雨が降りそうだった。
そんな空を仰ぎ見る蛮。









「もう…楽になりてぇ」





その声は誰にも届くはずなくただの呟きとして消えた。








虚無だけが襲う。











そんな虚無に呼応するようにポツリポツリと雨が落ちてきた。
落ちてくる雨に反射的に目をつむる。



滴は蛮をすり抜け、足下を濡らしていった。








.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ