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□What does God expect?
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「さっ触るな…ッ」
そっと頬に触れようとしてきた手を勢い委せに振り払い、行き場のないベッドの隅へとより背に冷たい壁がぶつかった。
「おやおや…どうやら、なにかわけ有りのようですね」
「……」
「私は隣の部屋にいるので何かあったら呼んでくださいね」
言葉聞くも頷くのが精一杯だった。
人を安易に信用してはいけないと散々教え込まれていた俺にはどうしようもできなかった。
ただ出ていく男の背を見送るしか。
どうしていいかわからずとりあえずベッドから降りて部屋のドアを開けた。
ドアを開けたと同時にガシャンと音を立ててなにかが割れる音が。
「あ…む、紫色の瞳…悪魔の子!!!」
「どうしました?」
唐突に俺を見て叫んだ女。
ぶつけられた現実にただ立ちすくむ。
廊下での騒ぎを聞き付け隣の部屋の扉が開いた。
「先生…!この子は魔女の子です!!!」
「だからどうしたんです?」
さっきと全然ちがう目で震える女を冷たく見て首を傾げる男。
まるで軽蔑する女を軽蔑するような目で。
「魔女は不幸を持ってきます…っ、それに汚れた血…神聖な此処へいれては「この子がいつ不幸をもって来ましたか?」
「…っそれは」
「何も罪を犯してない幼いこの子を裁く権利が貴方にはあるのですか?」
「……」
冷ややかに淡々と並べられた言葉に女は押され最終的にはもう何も言えず頭を下げて走っていってしまった。
女の背中を見送りながら小さく溜め息をついて蛮の前にしゃがむ男。
顔を合わした時には既に会った時の優しい笑顔に戻っていた。
「大丈夫ですか?」
「……」
なんて返せばいいかわからず、ただ首を縦に降る。
「…名前‥なに?」
ポツリと呟いた蛮に男は嬉しそうに笑み向けた。
「赤屍 蔵人と言います。あなたは?」
「美堂…蛮」
素敵な名前ですね、と呑気に笑う赤屍。
正直、毎回返答に困る。
「美堂くん、私のことは蔵人と呼んで下さいね」
「くろ…ど‥」
「はい」
確認するように名前を呟く少年に白衣の似合う男はにっこりと笑み浮かべて少年の頭を撫でた。
「美堂くん、少し私の部屋で話しませんか?」
「蛮でいい…」
照れくささからかぶっきらぼうに言い、問いかけに頷きながら差し出された大きな手をきゅっと握った。
「ありがとうございます」
小さな手をそっと握り返して微笑む。そのまま優しく引いて自室へと戻った。
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