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□What does God expect?
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控え目に音たて開く扉。
蛮を起こさぬ様に静かに開けて中へと入るも、立って此方へと視線移した相手に気づき微笑んだ。
「蛮、起きたんで「蔵人…!」
近寄る前に走って衝動的に抱きついてきた蛮に驚きつつ抱き止めた。
「怖い夢でもみましたか?」
服に顔を埋めたまま赤屍の問いかけに緩く左右に首を振る。
「俺、蔵人と一緒にいたい‥よくわかんねぇけど、俺もすき…だ」
「蛮…」
「でも、これで帰るから…もう、会わねぇから‥」
俺に関わった人は不幸になる
況してや呪術師に狙われ続ける毎日を一緒に過ごせるわけがない
そう頭ではわかってる
けど、夢でもいいからこの優しさに触れていたくて…
悔しいけどやっぱりババアの言う通り俺は弱い―…
「おやおや…そう言われると余計に帰したくなくなりますねぇ」
「蔵人…?」
「両思いなら裂く必要もありませんよ」
「わ…っ!」
そう言い軽々と蛮を抱き上げた。
バランス失った身体が倒れないよう思わず赤屍の首へと抱きつく。
「蛮、一緒に暮らしませんか?」
「ダメだ…蔵人が辛い思いする…」
「私はこれでも裏では死神と呼ばれている存在です」
「しに…がみ?蔵人が?」
はい、と隠す素振りもなく微笑む赤屍にきょとんとした表情で見つめた。
「死神は死を知っていますが、おのが死ぬことは知らないのです。故に死ぬことはない」
死神と名乗る男は微笑みを浮かべて語る。
「蛮…私が貴方を守ります。誰にも触れさせはしない。況してや傷つける者がいるならば愚か者に罰を与えます」
ふと見せた真剣な瞳。
その瞳からその言葉が偽りでない事がよくわかった。
「蔵人…強そう」
コツンと額と額をくっつけて小さく笑う蛮。
「クスッ、まあそれなりに」
「俺…蔵人と一緒にいる」
「離れてはダメですよ?」
「おうっ」
死神には無邪気な笑顔浮かべて頷く少年が天使のようにも見えた。
そんな天子が羽ばたいて行かぬよう、強く強く抱き締めた――…
揺れる木々の元、目を閉じ静かに風に耳を傾ける。
ふと、愛しい人が名を呼び駆け寄ってきた。
「蔵人ー!たくっお前またこんなトコで診察サボりやがって…」
「蛮が構ってくれないので」
「仕事中なんだからあたりまえだろ!」
あれから13年。
蛮は赤屍のサポート役として仕事を手伝っていた。
元々、頭もよく医術を学んでいたため今や赤屍の片腕となる程だった。
そんなパートナーでもある相手を自分の隣へと手招く。
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