愛の小箱
□王様の目にも涙
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手塚は一人、テニスコートの中央に佇んでいた。
先ほどまでたくさんいたギャラリーは、再び渡米するリョーマを見送るため、全員空港へ
向かったので今は誰もいない。
『敗北』
頭の中を様々な感情の渦が交錯していた。
その中でただ一つ鮮明にわかるのは
悔しい
それだけだった。
すると突然フェンスのドアが開く音がして、はっと我に帰り振り返るとそこには不二が
立っていた。
「お前は空港にいかなかったのか?」
「越前はみんながいればいいでしょ。桃もいるし。それに…」
不二は手塚の方に近づき、手塚の頬に触れ、
「どこかの誰かさんの方が心配だから」
「何のことだ…」
不二はクスリと笑い、
「今の気分はどう?息子に超えられた父って感じ?」
手塚は眉間にしわを寄せる。
「さしずめ僕は父を超えようとする息子を見守る母。そして…」
不二は手塚の首に腕を回し、顔を引き寄せて耳元で、
「今にも泣き出しそうな夫を支える妻。」
「なっ!!」
手塚は反論するため顔をあげようとしたが、不二の肩に顔を押しつけられてしまう。
「泣かないにしても悔しかったんだろ?」
手塚は一瞬躊躇ったが、不二には隠しても無駄だと思い、小さく頷く。