西浦小説
□青空の標本
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怒鳴りたかった訳じゃない
泣かせたかった訳じゃない
いらだちだけの訳でもない
ただ愛したかっただけだ。
■空の碧さを知らず■
「なぁ三橋、グンマってどんなトコ?」
「ん?んー…えと…あっ、パスタが、お、おい。あと、やきまんじゅうとか、うま…ぃよ?」
「食べモンばっかじゃねーか…」
「ごっごめ…ッ」
「いや、怒ってないから。」
きょどってばかりの三橋の頭を撫でる。そのうち落ち着いたのか、固まったまま阿部の手をどかす。
「あ、もしかして髪触られるの嫌だった?」
「ちがう、よ?ただ…」
「ん。まぁいいや、休憩終わるし、アップしよーぜ」
「ぅ、ん。」
(叶くん以外に触られたの、初めて…)
『元気で、な。』
(俺、元気だよ叶くん。叶くんも元気だよ ね?きっと俺がいなくなったからみんなと楽しく…楽し……)
「おいっなんで泣いてんだ!?そんなに俺に触られるのや?」
「ちがっ」
「…まぁいーけど…早く来いって!」
阿部がため息をついて歩きだす後ろを慌ててついていく。それを田島がみて不思議そうに花井に尋ねた。
「なぁーんかさぁ、三橋って可愛いよなぁ。ひよこみてぇ。」
「男に可愛いはないだろ…」
「花井もさったまにかわいーときあるけどさっ!」
「お前っ変なこと言うなよ……ッ!三橋!!よけろッ!!」
水谷の打った球が三橋にむかって飛ぶ。それを三橋がぎりぎりでよけたが、ふらついて倒れた。
「三橋ィっ!!」
阿部が叫びかけよるが、三橋はむくりと起き、平気と笑った。花井がかけより肘が擦り剥いてると言ったので阿部が保健室につれていくはめになった。
「しみるか?」
首を横にふる。保健室には誰もいなく、仕方なしに適当に手当てした。中学のときから阿部は手当てになれている。己の体に、生傷が耐えなかったからだ。