西浦小説

□残像暴力
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セックスは、暴力だ。




下劣で卑猥な行為が、押さえきれない衝動で体中をはい上がる。


泉とのセックスは、凶気の果ての墜ちた饗宴だ。


それが解っていても、止まることはできない。


背信の行方が例え、地獄だとしても。




■残像暴力■





「泉、今日花井と何話してた?部活中なんかコソコソしてたじゃん?」
「してねー。」
「栄口とさっきメールしてたのは何の用件だったの?」
「寝る。」

泉が浜田の部屋のベットで横になる。浜田に背を向けて、瞳を閉じた。
浜田がその肩をつかんで無理矢理自分のほうに向かせた。浜田の苛立ったような顔とは対照的に、泉は無表情で浜田を見上げた。

「ヤっていい?」
「浜田やめろ。ここんとこ毎日してんじゃねーか。」
「ッ!泉のせいだろ?泉が俺を不安にさせてるんだよッ!」
「勝手に不安になってるだけだろ?お前がただ俺を……ッ!?」

唇をふさいで浜田が泉に馬乗りにまたがる。両手で泉の頬を包んで唇すれすれのところで小さく「ごめん」と言う。

「泉ごめん…だから、俺だけを見てくれよ…ッ」
「……シテいい。」
「え?」
「お前がそれで落ち着くなら、シテいい。」

苦笑しながら、浜田は泉を抱き締めた。


このところ毎日といっていいほど泉を抱いている。それ以外に、どうやって静めていいか解らない。泉がだれのものかが解らない。


行為の後、寝ていると泉の話し声に目がさめた。泉は携帯片手にベランダで笑っている。
だから、腹がたつんだよ。

「へぇ、じゃあ今日も水谷は栄口んちに来たわけ?かわいーじゃ…」

背後から泉の携帯を奪う。携帯から誰かの声で泉、と聞こえ、すぐに切った。唖然とした泉がすぐに浜田の頬を叩く。

「なに、してんの?何してっか解ってんのか?!」
「………いって、口ん中切れた。」
「栄口はただの友達なんだよ!花井も、みんなッお前以外は…ッ…なんで解らない!」
「解ってないのは泉だよ。他のやつから見れば俺も栄口も同じだぜ。」

泉の携帯を閉じて泉に返す。その手で、泉の首を軽くもつ。
少しずつ力がこもる指先に、泉が慌てて浜田の腕をつかんで外そうとした。必死の泉の顔をゆっくり幸せそうに笑って浜田が眺める。
涙目になって酸欠で泉の指から力が抜けてゆく。急に手を放して、泉の体を支えるとベットへ寝かせる。
意識が遠退いて泉はそのまま眠った。
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