PARODY SS
□誰が為に鐘は鳴る
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あの女、が母親だということを知ったのは、一緒に暮らして三年たってからだった。
「恭平、あたしアンタを産むの、いやだった。」
その一言でアレはやっと自分の母親だということを理解した。
孤児院で育ち、小学生になる頃、母は俺を見にきた。ただ見て帰るはずだったのに、何を気に入ってかそのまま引き取られた。
当時、金持ちの医者の家に引き取られるはずだったが、なぜかこの若い女に引き取られることになったのは、親子だからだろうか。
「恭平、お前はだんだんアイツに似てくるね。」
口ごたえはほぼしてこなかった。たまに口を自主的に開き、父親は誰かと聞いたら体を固定されて何日も殴られ蹴られ、おぞましいことをされたことがある。
「孕ませてあたしを捨てたアイツが憎いッ!!それでもッ愛してるのよッ!!どうしてあたしを選ばないの!?」
日々続く折檻を、見たこともない父親のせいにすると気が紛れた。呪われろと、何度もあの女に折檻されるたびに思った。
あの女は、父に似た俺を衝動的に憎み、心の底から愛していた。
だから俺は愛し方も愛され方も、それ以外知らない。
「恭平、愛してる。でもごめんね。あたし、あの人と一緒にいたい…」
愛人だった母は、相手の男を殺して、自殺した。
結局俺は母から、歪んだ愛を植え付けられて、壊すことしか学ばなかった。
いずれ誰かを愛せたなら、あんな女のように悲しい愛し方などしないで、大事にして、優しく接して、傍にいられますように。
あの女の血が支配するこの体と心で、そう願わずにいられなかった。
■誰が為に鐘は鳴る■
「恭平さん、日曜の全国模試受けなかったそうね。」
「すいません母さん。日曜は院の手伝いに行ってました。」
「そう。…気を悪くしたらごめんなさい?恭平さん、孤児院にはあまり出入りしてほしくないわ…あなたの…家はここなのよ?」
「はい母さん。僕はとても幸せです。何一つ不満はありません。けれど…あそこには母さんや父さんに会えた感謝を込めて、何か役にたちたいんです。」
「恭平さん…」
「ですが模試を休んだのは反省しています。次は必ず一番を母さんに見せますね?」
「そう。あなたは本当に偉いわ。私の立派な息子よ」
「ありがとうございます。」
母が死に、すぐに俺は前に養子を申し出た老夫婦に引き取られた。