PARODY SS

□スクラップ・ヘブン
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『ねぇ、運命って…信じている?』





もしも、運命が約束されたものならば、誰かがそっと教えてくれたなら、誰もこんなにも、傷つかなくてもいいのではないだろうか。




あがらうことさえできぬのなら、いっそ、消えてなくなればいいのに。








誰も、誰かを愛さなければいいのに。












■スクラップヘブンT■







その日、少し肌寒いというのに、車内は妙に熱く、窓ガラスは曇って外から中を見ることはできない。
好都合だと、まだ少し余裕のある頭で浜田は考える。

「…ここでヤっていい?」

泉は潤んだ瞳を俯かせながら、先程のキスで濡れた唇を右手の親指の腹で拭い、ゆっくり頷いた。

「あ、でもカーセックスって公然猥褻で罪になるんだっけ。…いや…」

いや、いまさら、一つ罪が加わったところで問題はないだろう。すでに幼児拉致に軟禁、誘拐状態だと気付き、口元でうっすら笑う。
秋丸の捨てセリフを思い出して、ハンドルを握る手の力が強くなる。
浜田は己が抜け出せない、何か大きな流れに乗ったかのように感じていた。


「泉…おいで?」

後部座席に移動して浜田が手招くと、泉は濡れた瞳を揺らしてゆっくり移動する。

「ああ、そうか俺……ずっと」

ただ泉を、抱き締めたかっただけなんだ。

誰もいない場所で、二人きり、強く。

今までオンナをいくら抱いても、抱こうとしても満たされなかった欲情がこんな小さな少年を胸に抱くだけで、満たされるなんて。


浜田は上半身を起こし、向かい合わせに抱き締めた泉の前髪をそっと除けて、額にキスを落とす。少し困ったように目を伏せて瞳を閉じる。赤く染まった頬、閉じた瞳、それから、唇に触れる。
頬に添えた浜田の手に、自分の小さな手を添えて猫のようにすりよせると、泉はゆっくり目蓋を持ち上げた。

「可愛い…泉、スキだよ…苦しいぐらいに。」
「ッ…あまり、そーゆうこと言うなよッ」

顔をさらに真っ赤にしながら浜田の髪を鷲掴みにして頭突きを軽くする。
近づいた顔にチャンスとばからりに浜田が笑って口付ける。抵抗する泉をよそに、そのまま深く、唇を奪う。

「ん…ッ…ふぁッ!はま……〜ッ!」

鼻にかかったような甘い喘ぎに、脳から痺れて溶けてしまいそうだと、浜田は思う。いや、溶けてほしい。そして二人交ざりあって。

泉との、永遠が、欲しい。
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