PARODY SS
□狂えれば、いいのに
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ひふのうえを、冷たい氷が走ったみたいだった。
「泉ぃいぃぃーッ?!」
パタタ、と床に血が伝う。浜田の叫びに、一番驚いたのは泉だった。
膝から崩れ落ちる泉を、浜田は必死に抱き止めた。
高瀬が自由になった体で秋丸の右手を掴み、手の中のナイフを奪い取った。秋丸は表情を微塵も動かさずに、よろよろと後ずさり壁に寄りかかると床に座り込む。
「織田!血がっ?泉ッ!!」
「動かすな!ここは病院やろ、すぐ運べばなんとかな」
「…泉がいけないんだ…」
秋丸の一言に場が静まる。息の絶え絶えの泉がパチリと瞬きをしてから、秋丸を見据えた。
「そうだ…どうして泉もっ考介もッ俺を愛してくれない?!母親でさえ!俺を見なかったじゃないか!!やっと俺は、俺だけが愛せるものを見つけたのに!!…血も何も関係ない感情を他人に初めて…」
ガタンと扉がはずれるように開く。とたんに、熱気が室内を覆い、いぶしたような匂いが鼻をついた。
全員が扉の方をみると、目が血走ったように怒りに顔を歪めた利央が叫ぶ。
「他人?他人だとッ!?」
利央の後ろには叶が茶色い髪の少年を担いでいる。織田はすぐに少年が栄口と理解し、名を呼んだ。
「