THANKS!

□ケンカの後
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今日、俺はまた彼女を泣かせてしまった。
原因は些細なこと。悪いのはもちろん俺の方。
仕事の忙しさと睡眠不足のイライラをついぶつけてしまったのだ。

泣きそうな目をしながら、それでも泣くまいとグッと堪えて笑ってくれたあの子。
"仕事持って帰って来ちゃったから。テルは先にゆっくり寝てて"
そう言って自分の部屋に閉じこもってしまった。
我に返ってみたらアレは絶対嘘で。
疲れている俺にこれ以上の負担をかけまいと一人で泣きに行ったに決まってる。

疲れているはずなのに、何故だか眠れない一人きりのベッド。
隣が空いていることが物足りなくて仕方ない。
それにやっぱり彼女のことも気になる。
俺は気だるい体を起こして彼女が閉じこもった部屋へ向かった。

扉の前に立っても物音一つしない。
いつも聞こえるキーボードを叩く音さえない。
やっぱりアレは嘘だったんだな、って本当に申し訳ない気持ち胸いっぱいに広がって。
思わず伸びた手でノックを2回。

「なぁ、開けて…?」

「…どうかしたの?」

扉越しに聞こえる少し鼻声にチクリと心が痛んだ。

「…さっきはごめん。お前がいないと寝れないよ」

だからこの扉を開けて?
そして抱きしめさせて欲しい。
涙を拭いて顔を見てもう一度ごめんって言わせてくれ。

暫しの時間を置いてためらうように開けられた扉の向こう側。
やっぱり彼女は真っ赤に目を晴らしていて。
それを見た瞬間、思わず抱きしめていた。

「ヤツ当たりなんかしてごめん」

「ううん、気にしてないよ。疲れてるんだから仕方ないよ」

傷ついてるはずなのに、こんなにも優しく気づかってくれる。
それなのに俺は…

そう思った瞬間にこみ上げてくる愛しさ。
そのままに俺はもっと強く抱きしめた。

「愛してるよ」

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