★×向日岳人A★

□積然
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偶然。
ただの偶然。
でも偶然と偶然が重なって、それが必然になるんだ。

□■積然□■

岳人は今、立海に来ていた。
来る用事があったとか、偵察とか、そんなことではない。
ただ、久し振りに部活が休みだから出掛けたくなって、せっかくだからと遠出して、帰り際に、立海が近いと気付いて少し立ち寄ってみただけだ。
氷帝は今日練習が休みだが、立海は練習をしているらしい。
ならばついでだからと、岳人は滅多にしない偵察をすることにしたのだ。
立海ほどの規模の学校ならば、敷地内に入るのは難しくない。
テニスコートの場所も知っているため、岳人は迷うことなくそこに向かっていった。

「…あ、ここだ」

コートではよく見るレギュラーの面々が真面目に練習していた。
岳人は取り敢えず見つからないように、コートの端の方、フェンス越しにこっそり様子を見ることにした。

「うわー…やっぱ厳しいなぁ」

氷帝も練習は厳しいが、立海も負けてはいないようだ。
副部長の怒声と、ボールを打つ音がよく響く。
その様子に、思わず見入ってしまう。

「…何してんスか?」

「っうわ!」

そうしていたところで、突然後ろから声を掛けられ、岳人は大きく声をあげてしまう。
そこにいたのは、立海の切原だった。

「あ、い、いや…なんでもないし、もう帰るからさ…」

「…練習見たいんなら言えばいいじゃないスか」

「え、えっ…」

岳人はそのまま切原に連れられ、部室に連れ込まれてしまった。
勝手に忍び込んできた以上、何も強く言うことは出来ない。

「あ、部長」

「赤也か。…ん?そっちは?」

「え、えーっと…」

部室に行くと、そこには部長の幸村がいた。
机の上には、何か判らないがプリントが散らばっている。

「氷帝の…向日くん、だっけ?どうしてここに?」

「なんか、練習見てたんで連れて来たんスけど…」

岳人はこの上ない居心地の悪さを感じていた。
氷帝は正レギュラー自ら偵察をしなければならないほどだと思われるのも、氷帝にとってはマイナスでしかない。
それに今日、岳人はただたまたま近くに来て立ち寄っただけで、特に用事がないというのも問題だった。
何か用事があれば構わないのだが、暇だから見に来たと言えるほど、両校の親交は深くない。

「あ…俺もう帰るからさ、気にすんなよ」
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