★×向日岳人A★

□何よりも大切な
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ダブルスパートナー。
恋人。
違うものを比べるなんて。

□■何よりも大切な□■

丸井が氷帝まで遊びに来た。
と言っても、突然だったため、何が出来るわけでもなく、ただ部活を見学する程度だった。
丸井の目的は当然岳人で、練習を眺めながら岳人を視界から外すことはなかった。

「侑士、お疲れ」

「ん、お疲れさん」

ダブルスでの練習の後、岳人は忍足の隣に座って寛いでいた。
ドリンクを飲みながら今の練習のことについて話している。
岳人は少し身を乗り出し、忍足との距離も近い。
少し離れたところで見ていた丸井は、それがとても気に入らなかった。
結局、部活が終わるまで丸井は待っていて、岳人と一緒に帰ることとなった。

「なあ、お前さ…」

「うん?」

「あの眼鏡の奴と仲良いんだな」

「あー、侑士のことか?確かに仲良いかもなー」

丸井の様子に気付かず、岳人は笑って答える。
丸井の機嫌はどんどん悪くなっていった。

「…お前さあ、あいつのこと何だと思ってんだよ?」

「え?何って、大事なダブルスパートナーだけど?」

しれっと答える岳人に、丸井はきつく拳を握り締める。
悪びれもなく答える岳人に対する苛立ちはどんどん高まっていく。

「っあー、もー知らねぇ!」

「えっ?」

「そんなに大事なら、もーあの眼鏡とずっと一緒にいればいいだろ?俺はもう知らねぇ!」

丸井はそのまま岳人を置いて一人で帰ってしまった。
一人取り残された岳人は、その背中を呆然と見送っていた。

***

それから暫くして、岳人は丸井の家に招かれた。
この前のことが少し気になったが、寧ろ今日謝って仲直り出来ればと思って出向いていった。

「おう、よく来たな。取り敢えずこれ飲めよ」

「あ、うん」

出された麦茶を、何の疑いもなく飲み干していく。
それを見て丸井が笑っているのにも気付かずに。
少しすると、岳人の身体は途端に熱を持ち始める。

「あ、ぁっ…?」

「…どうかしたか?」

「か…らだ、が…熱…」

岳人はどうしてそんなことになったのか判らず、混乱するばかりだった。
実は、丸井がその麦茶の中に媚薬を入れていたのだ。

「ぁ、あぁあっ…た、助け、てっ…」

あまりに熱くなる身体に、岳人は丸井に助けを求める。
しかし、丸井はそんな岳人をただ冷たく見下ろすだけだ。
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