★×忍足侑士B★
□ハニー!
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周りから何と言われても構わない。
だって、幸せだから。
□■ハニー!□■
「ただいまー」
「お帰りー」
佐伯が家に帰ると、ぱたぱたと音を立てて、忍足が迎えに来る。
奥からはふわりと夕飯のいい匂いが漂ってきて、それだけで一日の疲れが癒されるようだ。
「ご飯出来とるよ。風呂の準備もしとるけど」
「うん、先にご飯食べようかな」
重い鞄を忍足が持ち、一緒にリビングまで歩いていく。
誰がどう見ても、幸せなだけの新婚夫婦だ。
「ほな、座っとってや?すぐに味噌汁とご飯持ってくるさかい」
「はいはい」
上着を脱ぎ、椅子に腰掛けて待つ佐伯に、忍足は作っておいた味噌汁とご飯を運んでいく。
佐伯の好みの味に合わせて作ったそれは、美味しそうに湯気を立てている。
「いただきます」
「ん、どーぞ」
そして、一生懸命作ったそれを、佐伯が美味しそうに食べてくれるのが、忍足にとって一番幸せだった。
「うん、美味しい」
「ホンマ?あー良かった…おかわりもあるからな」
もちろん忍足も一緒に食べるのだが、佐伯が優先だ。
対等な関係であるとしても、やはり妻として、夫を立てたいという忍足の希望からだった。
「ごちそうさま」
「ん、お粗末様でした」
佐伯がすっかり食べ切ってしまうと、忍足は空になった皿をさっさと片付けに行く。
ついでに食後のコーヒーを淹れる、その時間が忍足は大好きだった。
「ちょっと休憩したら一緒にお風呂入ろうか?」
「…ん、ええよ」
何気なく交わされる会話ですら、幸せそうな雰囲気が漂う。
勿論、ここには二人で住んでいるため、誰一人として二人の邪魔をする者はいない。
そのため、二人は心おきなく、こうして甘い会話をするのだった。
***
「ほな、背中流すな?」
「うん、ありがとう」
風呂も当然、佐伯が優先だ。
一緒に入るとは言っても、忍足は甲斐甲斐しく、背中を流したり髪を洗ったりと忙しい。
湯舟には一緒に浸かるのだが、あまりべたべたとくっつくことはなかった。
「もっとこっち、おいでよ」
「ん…けど、恥ずかしいからええ。くっついとったら、変な気分になりそうやし」
新婚ほやほやの二人には、まだ、ほんの少しだけ照れが残っている。
甘い言葉を交わすことには抵抗はないが、肌を寄せることは、まだそれほどすんなりとは出来ない。
「変な気分になってくれてもいいんだけどね」
「えっ…?」
「…冗談だよ。逆上せる前に出ようか」
少しぬるめのお湯にしっかり浸かって身体を温めれば、後はもう寝るだけ、二人が一番のんびりと過ごせる時間がやってくる。
「お風呂出たら冷たいもの食べてゆっくりしよう」
「ん。ゼリー作っとるから」
そんな何気ない会話ですら、二人でするのがとても楽しくて仕方がない。
***
その後、二人で忍足手作りのゼリーを食べ、のんびりと二人で寛いでいた。
寝室の準備は忍足がしっかりと整えてある。
結婚が決まった時、一緒に家具屋に行って選んだお気に入りのベッドだ。
ダブルベッドのキングサイズが一つ、ここで二人で一緒に寝ている。
マットはふかふかで柔らかく、布団も羽毛で軽くて温かい。
「ほら、こっちおいで」
「…ん」
広過ぎるベッドなのに、二人はぴったりとくっついて眠る。
くっついたところからお互いの温もりが伝わってくるのも、幸せの証拠だ。
「おやすみ」
「…ん、おやすみ」
二人は寄り添ったまま、そっと目を伏せた。
甘い生活は、それから先もずっと続いていく。
□■END□■