★×忍足侑士B★

□うさぎりんご
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辛いし苦しいし退屈なんだけど。
でも、たまにはこういうのも悪くない。

□■うさぎりんご□■

ジローが風邪を引いたらしい。
昨日は珍しく一日中起きていて、なんとなく様子がおかしかったのだが、それがどうやら風邪を引いている予兆だったらしい。
学校にいてもほとんど寝ているはずなのに、休みとなると急に静かになるのが不思議だった。

「なんか、物足りねぇよなぁ」

「…せやな」

いつも一緒になって騒いでいる岳人も、つまらなさそうにしている。
他のメンバーも、ジローのことは多少気になっているようだ。
なんとなく活気がないまま部活が終わると、忍足はまっすぐ家に帰ることなく、ジローの家に向かった。
途中、何か見舞に持っていかなければと美味しそうな真っ赤なりんごを3つ買っていく。
家を訪ねていくと、ジローは部屋で寝ているといって案内される。

「…なんや、思ったより元気そうやな」

「…忍足…」

布団に寝ているジローは、額に冷たいタオルを乗せている。
頬は赤く、瞳は少し潤んでいる。

「りんご買ってきたんやけど…」

「…ううん、今はいい…」

声は少し掠れている。
喉も痛いのだろうか、少し喋っただけで咳込んでしまう。
起き上がろうとするジローの両肩を押さえ、半ば無理矢理そのまま寝かせつける。
触れた身体はいつもとは比べ物にならないくらいに熱い。

「うわ、これめっちゃ熱あるんやないか?」

「うん…ちょっとね…」

ちょっとどころではない。
かなりの熱があることは簡単に判る。

「無理せんと寝とってええんやで?」

「ん…でも、せっかく忍足来てくれたんだから…」

普段は人前でも全く気にすることなく寝てしまうジローも、何故かこの状況で気を遣っているらしい。
潤んだ大きな瞳で見つめられると、忍足は少し照れたように笑ってさりげなく視線を外す。

「1日寝てて、少しはよくなったし…明日か明後日には学校行けるよ」

「さよか…ならええわ。ジローが居らんと寂しいからな」

「うん」

それは忍足の本音だった。
誰とも仲良くしながらも、その誰ともそれなりの距離を置き、関わり過ぎないスタンスの忍足も、ジローにだけは夢中なのだ。

「…忍足」

「ん?なんや?」

「りんご食べたい」

少し話して喉が渇いたのか、ジローは忍足の見舞を欲しがった。
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